鴎外おうがい)” の例文
私の想像する新文学——そのころの新文学というと申すまでもなく尾崎紅葉おざきこうよう幸田露伴こうだろはん崛起くっきした時代で、二氏を始め美妙びみょう鴎外おうがい
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
どうも、みんな、い言葉を使い過ぎます。美辞を姦するおもむきがあります。鴎外おうがいがうまい事を言っています。
わが愛好する言葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
紅露は相対塁あいたいるいして互にを称し、鴎外おうがい千朶せんだ山房に群賢を集めて獅子吼ししくし、逍遥は門下の才俊を率いて早稲田に威武を張り、樗牛ちょぎゅうは新たにって旗幟きしを振い
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
復原楼は現時麹町区富士見町陸軍軍医学校のある処だという。鴎外おうがい先生が『伊沢蘭軒いざわらんけん』の伝に詳である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鴎外おうがい思軒しけん、露伴、紅葉、その他諸家の消息なぞをよくわたしに語って聞かせたのも同君であった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私十一ばかりにて鴎外おうがい様の『しがらみ草紙』、星川様と申す方の何やら評論など分らずながら読みならひ、十三、四にて『めざましぐさ』、『文学界』など買はせをり候頃
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一九一〇年の元旦がんたんにこの火山に登って湾を見おろした時には、やはりこの絵が眼前の実景の上に投射され、また同時に鴎外おうがいの「即興詩人」の場面がまざまざと映写されたのであった。
青衣童女像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼がいわゆる実験小説に対蹠していたことは、丁度わが国で最も深く正しく科学精神をつかんでいた鴎外おうがいの芸術が、自然主義一派の文学と鋭く対立した事情に酷似していはしまいか。
チェーホフの短篇に就いて (新字新仮名) / 神西清(著)
この点でも日本のパルナスは、鴎外おうがい先生の小説通り、永久にまじめな葬列だった。——こんな理窟りくつも言えるかもしれない。だからこの僕の話も、いよいよばかにして聞いてはいけない。
仏蘭西文学と僕 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
露伴、藤村とうそん、鏡花、秋声等、昭和時代まで生存していた諸作家は別として、僅かに一、二回の面識があった人々は、この外に鴎外おうがいびん魯庵ろあん天外てんがい泡鳴ほうめい青果せいか武郎たけおくらいなものである。
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鴎外おうがいがその撰文を書いたという、九代目団十郎の「しばらく」の銅像がある。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
私と兄鴎外おうがいとは年が十ばかり違いますから、物心のついたころは十五、六でしたろう。もう寄宿舍に入っていられました。西にし氏のお世話になられたのはその前です。私の記憶には何もありません。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
鴎外おうがいの名訳が、少年の恐怖をまざまざと描き出している。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「小金井喜美子さんは、森鴎外おうがいさんの妹さんです。」
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
鴎外おうがい漁史なり
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
鴎外おうがいは早熟であった。当時の文壇の唯一舞台であった『読売新聞』の投書欄に「蛙の説」というを寄稿したのはマダ東校(今の医科大学)に入学したばかりであった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
私は鴎外おうがいの歴史小説が好きでしたけれど、芹川さんは、私を古くさいと言って笑って、鴎外よりは有島武郎のほうが、ずっと深刻だと私に教えて、そのおかたの本を
誰も知らぬ (新字新仮名) / 太宰治(著)
の道ならば『芥子園画伝かいしえんがでん』をそのままに説きもいづべく油画ならばまづ写生の仕方光線の取方絵具の調合なんど鴎外おうがい西崖せいがい両先生が『洋画手引草てびきぐさ』にも記されたりと逃げもすべきに
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
たとえば、ここに、鴎外おうがいの全集があります。勿論もちろん、よそから借りて来たものである。私には、蔵書なんて、ありやしない。私は、世の学問というものを軽蔑して居ります。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
S・S・S即ち鴎外おうがいの新声社派の「おも影」が『国民之友』に載って読書界を騒がしたのはこの年の夏の第二回の特別附録の時であって、美妙は文壇的には鴎外よりも早く
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
鴎外おうがいは、かしこいな。ちゃんとそいつを、知らぬふりして実行していた。私は、あの半分でもよい、やってみたい。凡俗への復帰ではない。凡俗へのしんからの、圧倒的の復讐ふくしゅうだ。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
日本ではことにこの技術が昔から発達していた国で、何々物語というもののほとんど全部がそれであったし、また近世では西鶴さいかくなんて大物も出て、明治では鴎外おうがいがうまかったし、大正では
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
僕はこんど軍隊からかえって来て、鴎外おうがい全集をひらいてみて、鴎外の軍服を着ている写真を見たら、もういやになって、全集をみなたたき売ってしまいました。鴎外が、いやになっちゃいました。
(新字新仮名) / 太宰治(著)