鮟鱇あんかう)” の例文
鮟鱇あんかうはらをぶく/\さして、かたをゆすつたが、衣兜かくしから名刺めいしして、ざるのなかへまつすぐにうやうやしくいて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
殘つた魚を竹の皮包にして持つて歸つたのは、後で鮟鱇あんかうと判つては面白くないからだ。
寒鯥かんむつ鮟鱇あんかう寒比目魚かんびらめなぞをかつぎながら、毎日大森の方から來てわたしの家の前に荷をおろす年若な肴屋がある。冬の魚を賣つて行く。その後には何かしら威勢のいゝ、勇みなものが殘る。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
水仙すゐせんかを浮世小路うきよこうぢに、やけざけ寸法すんぱふは、鮟鱇あんかうきもき、懷手ふところで方寸はうすんは、輪柳わやなぎいとむすぶ。むすぶもくも女帶をんなおびや、いつもうぐひす初音はつねかよひて、春待月はるまちつきこそ面白おもしろけれ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それと氣の付いた御家人喜六と唐人お勇が、吉三郎如きに大事の手形を取られちやかなはないから、鮟鱇あんかう河豚ふぐと言つて食はせ、實は毒酒で殺して死骸から牙彫けばりの手形を拔いたのだよ」
けれどもぶりではたしかにない、あのはらのふくれた様子やうすといつたら、宛然まるで鮟鱇あんかうるので、わたしかげじやあ鮟鱇博士あんかうはかせとさういひますワ。此間このあひだ学校がくかう参観さんくわんたことがある。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
六人の美しい女を、六樣に描きわけた、恐ろしく色つぽい唐紙で仕切られた八疊の部屋の入口に、長押なげしにぶら下げられた主人の丹右衞門は、鮟鱇あんかうのやうに斬られて死んでゐるぢやありませんか
鮟鱇あんかうにしてはすこかほがそぐはないからなににしやう、なにるだらう、このあかはなたかいのに、さきのはうすこれさがつて、上唇うはくちびるにおつかぶさつてる工合ぐあいといつたらない
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いえ、生れて初めてださうで、ひどく嫌がつて居りましたが、二人に笑はれて我慢に食べたやうです。でも、一とはし二た箸食ひ始めると、——こりや飛んだうまいや、鮟鱇あんかうそつくりだ——そんな事を