騾馬らば)” の例文
Old time coach の紳士倶楽部員と、老夫婦をのせた騾馬らば車の鈴、赤・黄・緑の見物自動車シャラパンクと最新のロウドスタア。
ところがその辺に小さなテントを張ってその中で火を燃して居る者があって、そのテントの近辺に騾馬らばが沢山草を喰って居ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
どこやらで騾馬らばの啼く声もきこえた。かれの衰えは去年から眼についていたが、戦場の秋にその訃音を聴こうとは思わなかったのである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は通訳の青年のほかに連れはなかったので、彼に一しょに行ってくれるように頼み、二人の乗り物として、騾馬らばを一頭ずつもらいました。
長屋門ながやもん這入はいると鼠色ねずみいろ騾馬らばが木の株につないである。余はこの騾馬を見るや否や、三国志さんごくしを思い出した。何だか玄徳げんとくの乗った馬に似ている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近くは徒歩で、平地は小車こぐるまで、山は騾馬らば椅子鞍いすくらで行った。二人の老婦人が彼のともをした。道が彼女らに困難な時には、司教は一人で行った。
みすぼらしいわし達の鞄を負つて、騾馬らばが二頭、門口に待つてゐる。彼は一頭の騾馬に乗り、わしは他の一頭に跨つた。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
驢馬や騾馬らばや馬は人間の為に働きます。そしてこれらの動物は死ぬと直ぐ私達の靴の皮になる皮を残します。鶏は卵を与へ、犬は忠実に人間の仕事をします。
ヴィエンヌ河はその町はずれを流れていた。仏蘭西の国道に添うてけてある石橋、騾馬らばに引かせて河岸かしの並木の間を通る小さな荷馬車なぞが眼の下に見える。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は道具や什器じゅうきをつくったり、騾馬らばを馴らしたり、漁をしたり、狩をしたりせねばならなかったのである
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それは馬だの騾馬らばだの大きな犬だのゝ形で淋しい道に出沒し、また時にはちやうど今この馬が私の方にやつて來るやうに、道に行きくれた旅人を襲ふといふのだ。
御存じでしょうか。——かの山と雲の棧道かけじ騾馬らばは霧の中に道を求め、いわあなには年経し竜のたぐい棲む……
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
武具、爆薬、穀物、車輛、また奥の調度品には、絹、糸、油、金銀、それと牧場にも、牛、羊、騾馬らば家鴨あひるなどまであって、その集荷しゅうかには、七日も要したほどである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卒直な一徹過激な青年クリストフの騎馬行を——騾馬らば屋や役人や風車にたいして、ドイツおよびフランスの広場の市にたいして、彼がドン・キホーテ式にやりを振うことを
それはいが、先生自分でむちを持って、ひゅあひゅあしょあしょあとかなんとか云って、ぬかるみ道を前進しようとしたところが、騾馬らばやら、驢馬ろばやら、ちっぽけな牛やらが
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
超人間的な激昂げっこうや管弦楽的な痙攣けいれんよそおい、あるいはまた、半音から常に発して、半ば眠りかけてる騾馬らばのように、すべっこい坂の縁をすれすれに、幾時間も歩きつづけるような
仲間の八人と、騾馬らばをひく馬夫とがまず飯を食った。方は少しおくれていると、その一人が食いながら独り言をいうのである。
ガヴローシュはその間、撃剣の先生が生徒を励ますように、また馬方が騾馬らばを励ますように、声をかけて力づけてやった。
そこへ騾馬らばを六頭も着けた荷車がくるのだから、牛を駆るようにのろく歩いたって危ない。それだのに無人むにんさかいを行くがごとくに飛ばして見せる。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
旅行用の貧しい手鞄などを乗せている二匹の騾馬らばが門前に待っていました。セラピオン師は一方の騾馬に乗り、わたしは型のごとくに他の騾馬に乗りました。
暫くすると皆の人も起きましてその内の七、八名は昨夜放して置いた騾馬らばや馬を捜しに参りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
私は荷物を運ばせるために、騾馬らばを二頭、それに案内人を一人やといました。あの貴族には、いろ/\世話になったのですが、私がいよ/\出発することになると、大へんな土産物までくれました。
彼は騾馬らばの背に乗って山を通り、だれにも出会わず、無事に彼の「善良な友」たる羊飼いたちのもとに着いた。
その川は非常な急流で氷がたくさんに流れて居りますけれども、私は騾馬らばに乗って誠に気楽に向うへ渡りそれから山間やまあいの原を進んで参りましたがこの辺の山には樹もない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
屋根に蒲鉾形かまぼこがたの丸味を取ったかんのようなもののなかに、髪を油で練固ねりかためた女が坐っている。長柄ながえは短いが、車の輪は厚く丈夫なものであった。云うまでもなく騾馬らばに引かしている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
七 蛙と騾馬らば
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)