顔立かおだち)” の例文
旧字:顏立
香織かおりわたくしよりは年齢としが二つ三つわかく、顔立かおだちはあまりくもありませぬが、眼元めもとあいくるしい、なかなか悧溌りはつでございました。
特に「御所人形ごしょにんぎょう」とか「嵯峨人形さがにんぎょう」とか呼ばれるもので、昔からの技を守るものは出来が上等であります。顔立かおだちにも身形みなりにも型を守って乱しません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
やっぱり亭主では無かったのである。しかし兄弟とはどうしても受取れないくらい顔立かおだちが違っていた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
美しいと云う顔立かおだちでは無いが、色白の、微塵みじん色気も鄙気いやしげも無いすっきりした娘で、服装みなりも質素であった。其頃は女子英学塾に寄宿して居たが、後には外川先生の家に移った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ザックセン王宮の女官はみにくしといふ世のうわさむなしからず、いづれも顔立かおだちよからぬに、人の世の春さへはや過ぎたるが多く、なかにはおいしわみてあばら一つ一つに数ふべき胸を
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
つぶしにった前髪に張金はりがねを入れておっ立てているので、髪のよくない事がかえって目につきました。しかし睫毛まつげの長い一重目縁ひとえまぶたの眼は愛くるしく、色の白い細面のどこか淋しい顔立かおだち
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
巧く行ったら、黒く出ている顔の輪郭とか、光の当っている所即ち顔立かおだちを示す白い斑点とかの形に、微小ながらちゃんとした差があることが、分るかもしれないというつもりであった。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
私などが幾らか人の顔立かおだちなども分るようになってから、ちらちら話を聞いていましたのに、背こそすらりとしていますが、色白というのでもたく、顔立もよいとは思われぬものですから
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
と蝶吉がそう云う顔立かおだち、母親は名を絹といった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平生へいぜいはちょいちょいわたくしのところへもおまいりにる、いたって温和おんわな、そして顔立かおだちもあまりわるくはないおんななのでございますのに、嫉妬しっとめにはんなにも精神こころくるって