あらかじ)” の例文
湖山が『詩屏風』は少しく趣を異にしているので、梅痴はあらかじめこれを聞知って「是は新趣向大に面白き様存じ候」と言ったのである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鷲王しゅうおう龍王りゅうおうとのあいたたかうが如き凄惨狠毒せいさんこんどくの光景を生ぜんことを想察してあらかじめ之を防遏ぼうあつせんとせるか、今皆確知するあたわざるなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
翌朝ははやく起き、管守を訪ひてあらかじめことわりおき、さて姫と媼とを急がせつゝ共にボルゲエゼの館に往きぬ。
南洲其の免れざることを知り相共に鹿兒島にはしる。一日南洲、月照の宅をふ。此の夜月色清輝せいきなり。あらかじ酒饌しゆせんそなへ、舟を薩海にうかぶ、南洲及び平野次郎一僕と從ふ。
いぶかりつゝもひらきて読めば、とみの事にてあらかじめ知らするに由なかりしが、昨夜よべこゝに着せられし天方大臣に附きてわれも来たり。伯のなんぢを見まほしとのたまふにく来よ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
本邦にも牝鶏の晨するを不吉とした。『碧山日録』に、長禄三年六月二十三日癸卯みずのとう、天下飛語あり、諸州の兵ひそかに城中にたむろす、けだし諸公あらかじわざわいの及ぶを懼るるなり。
これはあらかじ諒恕りょうじょを願って置く。
げに埃及エヂプトの尖塔にも劣らぬ高さなり。かしこにぢしむるにはきもだましひ世の常ならぬ役夫を選むことにて、あらかじめ法皇の手より膏油の禮を受くと聞けり。姫。
ケダシ先生あらかじメ葬地ヲぼくセシトイフ。遠近会葬スルモノ百ヲ以テ数フ。先生玩好がんこう御セズ。飲酒たしなマズ。もっとも声色せいしょくヲ遠ザク。人ノ妓妾ぎしょうヲ蓄フルヲルモナホコレニつばセント欲ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わがあらかじはかりし如く、さし向ひとなりては何のむづかしき事もなかりき。おん身が得しは只一つの接吻なりしが、わが得しは千萬にて總て殘るくまなき爲合しあはせなりき。
藤田東湖藤森弘庵窃ニ君ニ謀ツテ曰ク幕吏因循ニシテ恐ラクハ膺懲ようちょうノ任ヲ尽スコト能ハザラン。天使モシ別勅ヲもたらシコレヲ責メンカ、アルイハ奮起スル所アラン。あらかじメコレヲサバ如何いかんト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)