露台ろだい)” の例文
旧字:露臺
ぼくは二階の廊下ろうかを歩き、屋上の露台ろだいのほうへ登って行きました。眼の下には、するどバウをした滑席艇スライデングシェルがぎっしり横木につまっています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
食卓に美味の並んでいるところもあれば、天女が美味をささげて回廊を伝って行くところもある。二階の露台ろだいには弥陀がすわっている。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
病人びょうにんが二、三人、露台ろだいにでて、すがすがしい春の空気をたのしんでいましたが、ちょうどそのとき、ガンの鳴き声を耳にしました。
ついには、せまい水道のなかにまでくぐって、そのながい影を水の上に投げている大理石の露台ろだいの下までもいってみました。
その客の中には、彼れの妻をはづかしめた貴族もまた、まじつてゐた。客は皆、その家の屋根にある露台ろだいで、饗応きやうおうけた。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしたちの寝部屋ねべやをわたしはどんなに美しいと思ったろう。そこには白い寝台ねだいがならんでいた。まどは湖水を見晴らす露台ろだいに向かって開いていた。
庭に面した露台ろだいの上には、若い孔悝が母の伯姫と叔父おじの蒯聵とに抑えられ、一同に向って政変の宣言とその説明とをするよう、いられているかたちだ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
だれか二人王子の像の下にある露台ろだいこしかけてひそひそ話をしているものがあります。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
さあ 下の露台ろだいにでてみませう
とある家の前をとおりかかったとき、露台ろだいの戸が開いて、黄色い光が、すきとおったかるいカーテンをとおして流れでてきました。
毎日同じ決まった食事の時間に露台ろだいの上に集まって、しずかに両岸の景色けしきをながめながら食事をした。日がしずむと船は止まった。日がのぼると船はまた動き出した。
まる屋根のお堂や、帆のかたちした露台ろだいが、薄い空気のなかに、すきとおって浮いていました。
第二室の外はまる天井の下に左右へ露台ろだいを開いた部屋だった。部屋も勿論円形をしていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
このことを、どの鳥もよく知っていて、あらしの吹きすさぶ季節きせつには、たくさんの鳥がこの大きな家々のえんがわや露台ろだいをかくれにするのでした。
いまはこの皇帝宮の娘である小さい少女が、夕べのかねの鳴りひびくころ、よくそこの低い小さな椅子いすこしかけています。すぐそばにあるとびら鍵穴かぎあなを、この子は露台ろだいと呼んでいます。
ロメオが露台ろだいの上によじのぼって、まことの愛の接吻せっぷんが天使の思いのように天へとのぼって行ったとき、まるい月は黒い糸杉いとすぎのあいだに半ばかくれて、みきった空にうかんでいたこともあるのです。