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釣下
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つりさ
かくても
未だ
怒は解けず、お村の
後手に
縛りたる縄の
端を
承塵に
潜らせ、天井より
釣下げて、一太刀
斬附くれば、お村ははツと我に返りて
盆前よりかけて
暑さの
時分をこれが
時よと
大汗になりての
勉強せはしなく、
揃へたる
籘を
天井から
釣下げて、しばしの
手數も
省かんとて
數のあがるを
樂しみに
脇目もふらぬ
樣あはれなり。
我と
我が
想像に
酔つて、
見惚れた
玉の
膚の
背を
透して、
坊主の
黒い
法衣が
映る、と
水の
中に
天守の
梁に
釣下げられた、
其の
姿を
獣の
襲ふ、
其の
俤を
歴然と
見た。