かさね)” の例文
三十三枚のくしとうの鏡、五尺のかつら、くれないはかまかさねきぬおさめつと聞く。……よし、それはこの笈にてはあらずとも。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
爲にも及ばじ依て小西屋へ參りし醫師いしは何れの者やらわからずとせんついて其方も醫師の事ゆゑ今越前ゑちぜんが問たきことありそも/\醫師は螢雪けいせつの學のまどに年をかさね人の生命いのち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
吟味聞役ぎんみききやくは、佐田遠江守さたとおとおみのかみ。審判役は手前があいつとめる。対決終了いたさば、石庵がお鶴の腑分ふわけをなし、両人吟味の実証をいたす。……勝をとったほうには、奉行へご褒美として時服じふくひとかさね
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
日も早や晩景に相なり候故、なほ/\驚き、後家を始め得念にはいづれ両三日中かさねて御礼に参上致すべき旨申し、厚く礼をべ候て立出たちいで候ものゝ、山内の学寮へは弥〻いよいよ時刻おくれて帰りにくゝ
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かさねて、士の道に勝負しょうぶなくして首取無とるほうなく槍を合せ運を天に任せん、と申ければ、げに誤りたりと槍押取おっとり、床机の上に居直いなおりもせず、二三槍をあわせ、槍をすて、士の道は是迄也。
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
要用のみかさねて申上候。匆々そうそう頓首とんしゅ
答うる声も震えながら、「何がなし一件じゃ、これなりこれなり。」と、握拳にぎりこぶしを鼻の上にぞかさねたる、乞食僧の人物や、これをいわむよりはたまた狂と言むより、もっとも魔たるに適するなり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)