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那樣
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そんな
『いや、
那樣ら
貴方に
云ひませう。』と、イワン、デミトリチは
身を
起して、
心配さうに
又冷笑的に、ドクトルを
見るので
有つた。
もし(
否、
惡い
事をした
覺もないから、
那樣氣遣は
些とも
無い。)と
恁うありや、
何の
雨風ござらばござれぢや。
喃、
那樣ものではあるまいか。
此に
入れられてゐるよりも
貴方に
取つて
奈何でせうか?
私は
此より
惡い
所は
無いと
思ひます。
若し
然うならば
何を
貴方は
那樣に
恐れなさるのか?
さも
無ければ
那樣ことを
恐がると
云ふ
理窟がないて。
一體お
前さんに
限らず、
乘合の
方々も
又然うぢや、
初手から
然ほど
生命が
危險だと
思ツたら、
船なんぞに
乘らぬが
可いて。
『
何を
那樣に
喜ぶのか
私には
譯が
分りません。』と、
院長はイワン、デミトリチの
樣子が
宛然芝居のやうだと
思ひながら、
又其風が
酷く
氣に
入つて
云ふた。