のめ)” の例文
『そんなでれ助だから君は駄目だよ』と突き飛ばしてやってものめったまゝ矢っ張りニコ/\していた。彼奴は余っ程馬鹿だよ
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
最初のやうな、若しくはそれに類似した少し激しい震動が来るならば、いつでもぐしやりと地にのめしさうに思はれた。
余震の一夜 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
學生はスカをくらツて、前へ突ンのめツたかと思ふと、頭突づつきに一ツ、老爺の胸のあたりをどんと突く。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
らじとべしかひなおよばず、いらつて起ちし貫一は唯一掴ひとつかみと躍りかかれば、生憎あやにく満枝が死骸しがいつまづき、一間ばかり投げられたる其処そこの敷居に膝頭ひざがしらを砕けんばかり強く打れて、のめりしままに起きも得ず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
はッと思って見ると、血がだらだらと暑い夕日にいろどられて、その兵士はガックリ前にのめった。胸に弾丸があたったのだ。その兵士は善い男だった。快活で、洒脱しゃだつで、何ごとにも気が置けなかった。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「つんのめっても構やしません。」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
葉子は見えも外見もなく、くすぐったそうに苦笑するのだったが、そうなると彼女も清川によって、無慚むざんに路傍にたたのめされた花束のようなものであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一人の男が、尾を振っている犬に近づいて何か与えたと思うと、背後にかくし持っていた棒でガクンとやった。犬はのめった。犬殺は幾つも続けさまに撲った。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
すでに幾度も苦いしるませられた庸三の警戒の目の下に、やり場のない魂のうずきを忍ばせている彼女は、すでにこの恋愛の前にすっかり打ちのめされていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「大いに将来をいましめてやったよ。『君は日本の最高学府で教育を受けて而もボートの選手チャンだったじゃないか? 田夫野人でんぷやじんの車掌に打ちのめされて口惜しくはないか?』ってね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今日こんちは、葬儀社でござい」等と言えば叩きのめされる危険がある。そこで土屋君も露骨には答え兼ねて旁〻かたがた多少のはくをつけるために、日頃取引関係のある陸軍を担ぎ出したのだ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いたずらに頭ばかり重いので、前にのめって肩を突き、いかに大病であったかを、今更感ずるのだったが、やがてへやたらいをもち込み、手首や足をそっと洗うほどになり、がくつく足で段梯子だんばしごを降り
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
自分の尻尾をもうとして足掻あがくから、独楽こまのように廻る。校長が慌てゝ、こら/\/\と叱ったけれど、止まらない。皆笑ったぜ。然う/\、女の先生が怺え切れなくなって、のめってしまった
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「私の乗っていた前の馬車がこの先で谷へのめり落ちましたよ」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「こんなことなら、あの時打ちのめしてやるんでした」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と褞袍の一人は押すより早く足を掬われてのめった。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と清君は床下へのめり込まないばかりに覗き込む。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
千吉君は不意をくらってのめったまゝ
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)