赦免しゃめん)” の例文
孫策はくるまに乗って、城門から出てきた。さだめし赦免しゃめんされるであろうとみな思っていたところ彼の不機嫌は前にも増して険悪であった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泰軒先生がさきにあがると、やっとのことで赦免しゃめんになった与吉、疲れをいやすどころか、かえってクタクタにくたびれきって部屋へ戻ったが!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
康頼殿、成経殿のご赦免しゃめんがあってあなたのみお残りなされたと聞かれてから、奥方の悲しみはもはや私のなぐさめ申すにはあまりに深くなりました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それは両手を開いて、一人には祝福を与え一人には赦免しゃめんを与えるために、その二人を抱かんとするかのようであった。
これは法学者のう compounding a felony ——盗品の買いあげもしくは返還賠償へんかんばいしょうの条件付きで犯人を赦免しゃめんすること——に該当し
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
もし赦免しゃめんに預らば、積善の余慶、長く家門に及び、栄華は長く子孫に伝わらんものと思い候。さすれば、義経年来の愁眉しゅうびを開き、一生の安穏を得るものと思い候。
現にあの琉球人なぞは、二人とも毒蛇どくじゃまれた揚句あげく、気が狂ったのかと思うたくらいじゃ。その内に六波羅ろくはらから使に立った、丹左衛門尉基安たんのさえもんのじょうもとやすは、少将に赦免しゃめんの教書を渡した。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
我翁わがおうが島に渡り、または赦免しゃめんに逢うて戻って来た人と、親しい交遊をしていたことはまだ聞かぬが、すくなくとも連句にしばしば咏歎えいたんせられている島の生活だけは写生であり
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
平家の兵船だと思うと、その船に赦免しゃめんの使者が乗っていることが三人にすぐ感ぜられた。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
百方、運動の手を廻し、時の右大臣忠平ただひらにも、莫大な贈り物をしたりして、三年で赦免しゃめんになった。その礼に、上洛したのである。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(赦文を読む)重科遠流おんるめんず。早く帰洛きらくの思いをなすべし。このたび中宮ちゅうぐうご産の祈祷きとうによって非常のゆるし行なわる。しかる間、鬼界きかいが島の流人るにん丹波たんばの成経、たいらの康頼を赦免しゃめんす。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「ならば、それでもよい。しかし、そんな小我の情を以て、玄明を赦免しゃめんせよの、追捕を解けのと、他国の内政へ、お口出しなどは、大いに困る」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから七年の間あなたの赦免しゃめんのことがある日をあけくれ待ちわびていました。けれど七年がむなしく過ぎました。待ちあぐんだ末、私はえきれなくなって人目をしのびこの島にたずねてまいりました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
と、幕府の寛大を——わけてこんどの大軍上洛にあたって万一の乱暴などないように——と、定房は、その赦免しゃめんだけでなく、庇護ひごをも切に頼むのだった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実は、この文覚に対して、どう風のふき廻してか、都より赦免しゃめんのお沙汰が届いたので、長らくお世話になったこの里を離れ、ただ今、都へ帰る途中でおざる。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌る日、荀攸は、謹慎中の二人を訪うて、まず赦免しゃめんの命を伝えて恩を売り、やがて伴って曹操の前へ出た。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「えっ、ご赦免しゃめんのお使いでも?」生信房は早合点して、体の肉がぶるぶるとふるえるような心地がした。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あいや、事情は、上申書にもちく一したためた通りでござりまする。かつはまた、ご赦免しゃめんの沙汰も聞えましたので、出府いたした次第、なにとぞご寛大をもちまして」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のみならず、この一年の間に、大赦たいしゃの令が出た。特に、五代綱吉の治代に、例の、畜類違犯で獄中にあったり、その起因による罪人つみびとは、一人あまさず、赦免しゃめんになった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赦免しゃめん御綸旨ごりんしをおうけしたからには、いずれ近いうちに都へご帰洛なさることであろう——
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しからば、そちに対しても、赦免しゃめんが達せられたので、さっそくこれへ見えたのじゃな」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうは赦免しゃめんになったきさまもくわえて、天馬侠第一声をここにあげたのだ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赦免しゃめんと聞くなり、後に残る獄人たちへ、挨拶もわすれ、手の舞い足の踏むところも知らずに、山へ行く人間とは——わしなどとは、格段のちがいのある人物だという事が、後になるほど分って来た。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、忍剣は、きょうの赦免しゃめんが、ゆめのようであるらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やっとこのたび赦免しゃめんの令が出たというわけでな……
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、赦免しゃめんの上、身柄は都返しと沙汰された。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近日、赦免しゃめん
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)