赤髯あかひげ)” の例文
それは、茶いろの少しぼろぼろの外套がいとうを着て、白いきれでつつんだ荷物を、二つに分けて肩にけた、赤髯あかひげのせなかのかがんだ人でした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
同席の自分とびた公以外の同席に七人の客がいるが、そのうちの四人が日本人で、二人が赤髯あかひげで、他の一人は目玉のあおい女でした。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おれはここに残るよ」と登は答えた、「おれをここへ入れたのは赤髯あかひげ先生だからな、その責任は先生にとってもらうよ」
博士は、低過蒸気機関の前で、椅子いすに腰かけたまま、こくりこくり居眠りしている、呑気のんき赤髯あかひげの機関士の前に立って
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
此の豪快な赤髯あかひげ詩人も、自己の作品の中に於てなら、友情が家庭や妻のためにこうむらねばならぬ変化を充分冷静に観察できた筈だのに、今、実際眼の前で
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
赤毛赤髯あかひげの兵卒は、後ずさりに、出て行った。その手には、典韋のほこを、いつのまにか奪りあげて持っていた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こう、情無いことを謂いなさんな。わっちゃこんなものでもね、日本が大の贔屓ひいきさ。何の赤髯あかひげ、糞でもくらえだ。ええその金時計はすぐ強奪ひったくって持って来やす。」
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤髯あかひげの大佐だったがな、そいつが何のかの難癖つけて困るから、番頭をやって例の菓子箱を出すと、ばかめ、賄賂わいろなんぞ取るものか、軍人の体面に関するなんて威張って
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「あすこに赤髯あかひげの男がいるだろう。いよいよやっつける時にはあの男が合い図をするんだぜ。」
是公の会話の下手な事は天品てんぴんと云うくらいなものだから、不思議に思って、御前は平生ここに出入でいりして赤髯あかひげと交際するのかと聞いたら、まあ来た事はないなと澄ましている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは、茶いろの少しぼろぼろの外套がいとうて、白いきれでつつんだ荷物にもつを、二つに分けてかたけた、赤髯あかひげのせなかのかがんだ人でした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、その中から、此の家の主人らしい赤髯あかひげの男が出て来て、暫く趙の父親と何やら話をしてから、奥へ引込んだ。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
なにしろ患者はのみしらみのたかった、腫物はれものだらけの、臭くて蒙昧もうまいな貧民ばかりだし、給与は最低だし、おまけに昼夜のべつなく赤髯あかひげにこき使われるんですからね
赤髯あかひげの大きなあぶらぎったでぶでぶの洋服男が一つ現われて、いきなり、裸体婦人の後ろから羽掻はがいじめにして、その髯だらけの面を美人の頬へ押しつけて、あろうことか
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あきれて籠をおろして腰をかけ弁当をたべはじめましたら一人の赤髯あかひげの男がせはしさうにやって来ました。
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
あの赤髯あかひげあおい眼で、日本娘さんと道行なんて、ドコまでそんなフザけた洒落しゃれくものか、いくら奥州の果てにしたところで、あれで晴れての道中ができたらお慰み
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は赤髯あかひげに屈服したのである。
きちんと起きてゐるのはさつきの窓のそばの一人の青年と客車のすみでしきりに鉛筆をなめながらきよときよと聴き耳をたてて何か書きつけてゐるあのやせ赤髯あかひげの男だけでした。
氷河鼠の毛皮 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大商人の隣席にいた赤髯あかひげが、片言かたことの日本語でほめました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「息ついだぞ。眼ぃだぞ。」一郎のとなりの家の赤髯あかひげの人がすぐ一郎の頭のとこにかがんでゐてしきりに一郎を起さうとしてゐたのです。そして一郎ははっきり眼を開きました。
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
向ふすみではあのやせ赤髯あかひげの男が眼をきよろきよろさせてみんなの話を聞きすまし
氷河鼠の毛皮 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)