はり)” の例文
そしてこの地方では、しかも一般にこの菓子を『はり菓子』と呼んで……ほら、見た事があるだろう?……葬儀用専門の飾菓子になってるんだ。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
すすけた壁のところには、歳暮せいぼの景物に町の商家で出す暦附の板絵が去年のやその前の年のまで、子供の眼を悦ばせるためにはり附けて置いてある。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その明るい中を、トンボの小屋はちょうど山蔭にあるので、クッキリと暗く、あたかも切り抜いてはりつけたように、その面白き輪廓を画いている。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
愚園ぐゑんの方は小さな浅草の花屋敷で、動物の外に一寸法師や象皮ざうひ病で片手が五十封度ポンドの重量のある男の見世物などがあり、勧工場くわんこうばや「随意小酌せうしやく」とはり出した酒亭しゆていもある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
裏通りも同様にアケスケな処が殖えて来て、飾も何もないボール箱式が多く、かなりの大きな家をトタン板ではり固めた、ペスト予防よろしくといったようなのも珍らしくない。
取らねば大事に成んも知れず大切なる腫物しゆもつなれば隨分ずゐぶんお大事に成るべしとて煎藥せんやく膏藥かうやくとを調合てうがふして置て行ければお花は彌々いよ/\むねやすからず醫者のをしへたる通り腫物に膏藥かうやくはり煎藥せんやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
このことの有った後は母の神経に益々ますます異常を起し、不動明王を拝むばかりでなく、僕などは名も知らぬ神符おふだを幾枚となく何処どこからかもらって来て、自分の居間の所々しょしょはりつけたものです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
もちろんまだ焼跡のまま空いている地面がいたるところにあって、そこにはより貧しい人たちの小屋が散在している。つじという辻には高札が立ち、そこにはこんな定書さだめがきはり出してある。
暦や錦絵にしきえはり付けた古壁の側には、六歳むっつに成るお房と、四歳よっつに成るお菊とが、お手玉の音をさせながら遊んでいた。そこいらには、首のちぎれた人形も投出してあった。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)