諸方しょほう)” の例文
あくる日はまる一日じゅう、諸方しょほうの訪問についやされた。新来の旅人はずこのまちのお歴々がたを訪問した。初めに県知事に敬意を表した。
ケメトスの評判が諸方しょほうに響き渡ると、彼と技をくらべようという者がたくさん出て来ました。しかし誰も彼に及ぶ者はありませんでした。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
偽怪、誤怪はすこぶる多きも、この二者を除き、なお実際の狐惑、狐憑きは諸方しょほうに起こり、たやすく実験のできることなれば、別段例を挙ぐるに及ばぬ。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
かれら、宿やどなしどもは、きたといわず、みなみといわず、西にしといわず、ひがしといわず、平常へいじょう諸方しょほうをあるきまわっていますから、なか不思議ふしぎなことをっていました。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
伯母には内密で諸方しょほうに借金が出来ました。まだその上に、お春親子にも三、四十両の借金が出来ました。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これ年頃としごろになったのでございますから、縁談えんだんくち諸方しょほうからあめるようにかかりましたが、俚諺ことわざにもおびみじかしたすきながしとやら、なかなかおもつぼにはまったのがないのでございました。
「わたしは、まずしい人間にんげんです。おやもありませんし、うちもないものです。こうして諸方しょほうあるいて、べるものや、るものをもらってある人間にんげんなのでございます。」とこたえました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
諸方しょほうからあめるようにかかって縁談えんだんなかには随分ずいぶんこれはというのもあったそうでございますが、敦子あつこさまはひとつなしにみなことわってしまうのでした。これにはむろんわけがあったのでございます。