あつらえ)” の例文
クションは、あの二人ずつ腰を掛けるあつらえので、私は肥満でっぷりした大柄の、洋服着た紳士のわき、内側へ、どうやら腰が掛けられました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幾婆いくばあさんに何であらうと相談すればここでもわからず、そんな噂はなかりしが兼吉さんがむので浴衣のあつらえでもあるのか知らぬとのみ
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
女は座席にくと悠々小田島のシガレットケースから煙草たばこき出してふかし始めた。そして胡散臭うさんくさそうに女を見乍らあつらえを聞く給仕男へ横柄に
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この化け物をとりこにしてやろう、人間が少し馬鹿だから、虜にするにはあつらえむきだ、いよいよ当座のよいおもちゃが出来たものだと、主膳の興が湧き上りました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三度三度献立こんだてを持ってあつらえを聞きにくる婆さんに、二品ふたしな三品みしな口に合いそうなものを注文はしても、ぜんの上にそろった皿を眺めると共に、どこからともなく反感が起って
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分達が立ったかわは、かえってこっちの山の裾が水に迫って、ちょうど切穴の形になって、そこへこの石をめたようなあつらえ
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、午飯ひるのおあつらえが持出されて、湯上りの二人と向合う、こちのあらいが氷に乗って、小蝦こえびと胡瓜が揉合もみあった処を見れば無事なものです。しかも女連おんなれんはビイルを飲む。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
半ば西洋づくりのかまえは、日本間が二室ふたまで、四角な縁が、名にしおうここの名所、三湖の雄なる柴山潟しばやまがたを見晴しの露台のあつらえゆえ、硝子戸がらすどと二重を隔ててはいるけれど、霜置く月の冷たさが
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あわせの上に白の筒袖、仕事着の若いもの。かねてあつらえ剃刀かみそりを、あわせて届けに来たと見える。かんぬしが脂下やにさがったという体裁、しゃくの形の能代塗のしろぬりの箱を一個ひとつてのひらに据えて、ト上目づかいに差出した。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ついでにもう一つ通名とおりながあって、それは横笛である。曰く、清葉、曰く令夫人で可いものを、が詮索に及んだか、その住居すまいなる檜物町ひものちょうに、磨込みがきこんだ格子戸に、門札打った本姓が(滝口。)はおあつらえで。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
額縁などがれて見える——あたかもその前にわざとひなめいたあつらえで。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「照焼にせいという、おあつらえですがなあ。」
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これぞ、われらのあつらえじゃ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(おあつらえは。)
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)