見聞みきゝ)” の例文
佐「ウンそれは有難い事で、足利の江川村などに居ちゃア講釈でも義太夫でも芝居でも見聞みきゝをする事は出来やアしない」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
当分はまあうちに引込んで、回想録でも書くんですね。御存知の通り、私も長らく官海にゐたものですから、随分いろんな事を見聞みきゝしてまゐりましたよ。それを
われは地底の雷聲と天半の火柱と此流とを見聞みきゝして、心中の弱處病處の一時に滅盡するを覺えたり。
雪頽なだれいのちおとしし人、命をひろひし人、我が見聞みきゝしたるをつぎまきしるして暖国だんこくの人の話柄はなしのたねとす。
またそのためにほかなりませんのでございますから、見聞みきゝのまゝを、やがて、とぞんじます。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見聞みきゝして大いに悦びしとは雖も是までも萬事後藤の世話になりしことゆゑせめ旅籠代はたごだいだけは衣類を賣て拂はんといふに夫をもとめられ猶亦二十兩の資本金もとできんまで長兵衞に預けし後藤の深切しんせつ何と禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
毎日山鳥の啼く鶯の囀る声、雉子などが樹から樹へ飛びうつるのを、何の慾心なしに見聞みきゝしている。そして絶えず新らしい木の香や、土の匂が彼にさわやかな清い心を与えているのであった。
惨事のあと (新字新仮名) / 素木しづ(著)
ロミオ その鶴嘴つるはし鐵梃かなてこ此方こちへ。こりゃ、この書状しょじゃうをば、明日あすはや父上ちゝうへとゞけてくれ。その炬火たいまつをこちへ。さて、しか申附まうしつくる、如何いかこと見聞みきゝせうとも、こと/″\立離たちはなれ、わし仕事しごと妨碍さまたげをばすまいぞよ。
人智じんちつくしてのちはからざる大難だいなんにあふは因果いんぐわのしからしむる処ならんか。人にははかりしりがたし。人家の雪頽なだれにも家をつぶせし事人の死たるなどあまた見聞みきゝしたれども、さのみはとてしるさず。