ほめ)” の例文
旧字:
人をほめれば自分の器量が下るとでも思うのか、人のた事には必ず非難けちを附けたがる、非難けちを附けてその非難けちを附けたのに必ず感服させたがる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ですから、骨肉しんみの旦那様よりか、他人の奥様に憎悪にくしみが多く掛る。町々の女の目はほめるにつけ、そしるにつけ、奥様の身一つに向いていましたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そういうほめ言葉の噂を聞くと鯉丈は肩を落して溜息をつき「そりゃそうだろうよ、おれはあのときいつでも客のために命がけで立って番をしているのだからな」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
白痴たはけ有者あるものか取たなら取たと申せ何も其方がたのまれる程で金子を取たとてべつはぢにも成ぬ又其方の身分で其金を取ぬと申たとてべつほめる處もない今申通金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すっかり忘れて居た、難有ありがたい/\、お前のお影で助かッた内儀が帰ッて来れば必ずお前をほめるだろう
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
今初まったでもないが困った始末、ただ感心なのはあの男と、永年の勤労が位を進め、お名前をきくさえが堅くるしい同郷出身の何がし殿が、縁も無いに力瘤ちからこぶを入れてほめそやしたは
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
ひとり大原君に限ってその癖がない。自分の脳髄の鈍い事を言立て他人の事は何でもほめる。学校にいた時分も自分の解らない疑問は誰の処へでも聞きに来る。自分より下級の人にでも尋ねる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そっちへ退けろ。おしかりはあるまいが、おほめ
何かしら瑕疵きずを見付けて、其で自分の見識を示した上で、しかし、まあ、可なりの作だと云う。ほめる時には屹度きっと然う云う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
殊に又美人の操ほどあてに成らぬ者は無く厳重なる貴族社会に於てすらも幾百人の目をぬすみて不義の快楽にふけりながら生涯人にしられずして操堅固とほめらるゝ貴婦人も少なからず
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ほめなさっても
で、平生は眼中に置かぬらしく言っていた批判家ひひょうかほめられたいが一杯で、いよいよ文学に熱中して、明けても暮れても文学の事ばかり言い暮らし、眼中唯文学あるのみで、文学のほかには何物もなかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)