“被(ひ)” の例文
食(くら)うときには箸(はし)を投じ、臥(ふ)したるときには被(ひ)を蹴(け)て起(た)ち、径(ただ)ちに往(ゆ)いて診したのは、少時の苦(にが)き経験を忘れなかったためだそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
誰(だれ)があんな自我の無い手合いと一しょになるものか、自分にはあんな中途半端(ちゅうとはんぱ)な交際振りは出来ない。征服(せいふく)か被(ひ)征服かだ。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
老宰相は夫人が掴(つか)まえられたことを見届けると床の板を剥いだ。床の下には被(ひ)に包んだ悪僧の死骸があった。被には生生(なまなま)しい血の斑点があった。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夫人は輕げなる寢衣(ねまき)を着て、素絹の長椅(ソフア)の上に横はりたりしが、我が入るを見て半ば身を起し、左手(ゆんで)もて被(ひ)を身に纏ひ、右手を我にさし伸べたり。
これを粥(かゆ)としまた鰹節(かつぶし)を煮出(にだ)して用(もちう)れば大に裨益(ひえき)あればとて、即時(そくじ)、价(しもべ)を馳(は)せて贈(おく)られたるなど、余は感泣(かんきゅう)措(お)くこと能(あた)わず、涕涙(ているい)しばしば被(ひ)を沾(うるお)したり。
貴君(あなた)に殺された和尚(おしょう)の死骸を、被(ひ)に包んで床の下にかくしてありますから、それを引出してからやってください
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)