血統ちすぢ)” の例文
う言ひ聞かせて、やがて持主は牛の来歴を二人に語つた。現に今、多くを飼養して居るが、これまさ血統ちすぢのものは一頭も無い。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さあ、ないと存じますわ。ですが、ロチィスター家は、昔からおとなしいと云ふよりは、烈しい血統ちすぢの人々だつたと云はれてを
ポーと山と海とレーノの間にて、まことと悦びに缺くべからざる徳をかくにいたれるものたゞその血統ちすぢのみならず 九一—九三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
言ひ伝へによると、白拍子しらびやうししづかが母の磯禅師いそのぜんじはこゝに住むでゐたのださうで、禅師の血統ちすぢはその後も伝はつてゐるが、うまれる娘は皆醜婦揃すべたぞろひである。
かさねしが當代たうだい新田につたのあるじはいへにつきて血統ちすぢならず一人娘ひとりむすめ入夫にふふなりしかばあひおもふのこゝろふかからずかつにのみはし曲者くせものなればかねては松澤まつざは隆盛りうせい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
話にも聞きつらん、祖先兵衞ひやうゑ直頼殿、餘五將軍よごしやうぐんつかへて拔群ばつくんの譽を顯はせしこのかた、弓矢ゆみやの前にはおくれを取らぬ齋藤の血統ちすぢに、女色によしよくに魂を奪はれし未練者は其方が初めぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
千萬言をつひやしたところで、呑込める筈はなく、百人に許した唇も、どんな罪惡の因子いんしを持つて居るかも知れない血統ちすぢも、花魁おいらんといふ名で淨化される、單純至極な考へやうには
『しかし、』とお志保はすゞしいひとみを輝した。『父親おとつさんや母親おつかさんの血統ちすぢ奈何どんなで御座ませうと、それは瀬川さんの知つたことぢや御座ますまい。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あゝ人の血統ちすぢのたゞさゝやかなる尊貴たふとさよ、情の衰ふるところなる世に、汝人々をして汝に誇るにいたらしむとも 一—三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
お兄さまがお部屋へいらして御覽になつた時にや、もう大方固くなつてゐらつしやいました。あゝ、お孃さん方、ほんとにお父さまは古いお血統ちすぢの一番おしまひのお方でございましたよ。
掛けないで下さいよ。あれは、下女にやとつた水呑百姓の娘だし、それに、血統ちすぢも良くありません。伜の嫁などと、飛んでもないことで、——年季が明けさへすれば、この三月には、親許に返します
先代の義弟と言つても何んの血統ちすぢ關係はなく、先代の娘の幾代を差置いて、淺田屋の身上を繼いだ形になるのですから、幾代には充分徳次郎を怨む理由があつたわけで、幾代の部屋の前を通らずには
〔衣〕血統ちすぢの尊さは美しき衣の如し
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「——私は、あの、先代の成瀬屋の血統ちすぢの者で御座います」