藁店わらだな)” の例文
火事できのこが飛んで来たり、御茶おちゃ味噌みその女学校へ行ったり、恵比寿えびす台所だいどこと並べたり、或る時などは「わたしゃ藁店わらだなの子じゃないわ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから第三は非業の死をとげた三日ほどまえにその職務に従い、牛込の藁店わらだなでだんなばくちを検挙したということでありました。
むかしよりして界隈かいわいでは、通寺町とほりてらまち保善寺ほぜんじ一樹いちじゆ藁店わらだな光照寺くわうせうじ一樹いちじゆ、とともに、三枚振袖みつふりそで絲櫻いとざくら名木めいぼくと、となへられたさうである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おせい様とは大の仲よしの藁店わらだなの瀬戸物問屋吉田屋の内儀おたみだ、いつも来て、じぶんのうちのように勝手を知っている家だ。案内も待たずに、奥へ通った。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
養母のりつは仲々の理財家で、株をやつたり借家を建てたりして、その頃は牛込の藁店わらだなに住んでゐたが、藁店の相沢と云へば、牛込でも相当の金持ちとして見られてゐた。
晩菊 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「あります。壽阿彌の方へは牛込の藁店わらだなからお婆あさんが命日毎に參られます。谷の音の方へは、當主の關口文藏さんが福島にをられますので、代參に本所緑町の關重兵衞さんが來られます。」
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
養母のりつは仲々の理財家で、株をやったり借家を建てたりして、その頃は牛込うしごめ藁店わらだなに住んでいたが、藁店の相沢と云えば、牛込でも相当の金持ちとして見られていた。
晩菊 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
たしかに百化け十吉らしい奴がゆうべ牛込の藁店わらだなに現れまして、そこの足袋屋小町と言われておりました若い娘を、巧みにさらっていったという訴えがあったげにござりまするぞ
身を包む無数の人と、無数の光が頭を遠慮なく焼いた。代助は逃げる様に藁店わらだなあがった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つゝむ無数のひとと、無数のひかりあたまを遠慮なくいた。代助はげる様に藁店わらだなあがつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところが天気模様が悪くなって、藁店わらだなを上がり掛けるとぽつぽつ降り出した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが天気模様がわるくなつて、藁店わらだながりけるとぽつ/\した。かさつてなかつたので、れまいと思つて、ついいそぎたものだから、すぐ身体からださわつて、いきくるしくなつて困つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)