うてな)” の例文
新字:
おご平家へいけを盛りの櫻にくらべてか、散りての後の哀れは思はず、入道相國にふだうしやうこくが花見の宴とて、六十餘州の春を一夕いつせきうてなに集めてみやこ西八條の邸宅。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
これを見または求むるにあたりて汝等を引くところの愛にぶければ、このうてなは汝等を、正しく悔いし後に苛責す 一三〇—一三二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ここに見る石鬼いしおに樋嘴ひさき石葺屋根いしぶきやねの水を吐き出して、うてなに、窓に、隅折上すみをりあげに、鐘樓に、櫓に、軒に、足場に、この入り雜つた深穴ふかあなへ落すのだ。
石工 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
少女は不圖我身を見るに種々の花身に纏ひて闇にも我から光を放つに自ら驚き、上の方を仰ぎ見れば玉のうてななど畫に見るやうに光りて遙に浮びたり。
花枕 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
綾衣 さつきぬしに見せたのは、花をちらすといふ覺悟の謎、たがひに解けて斯うなるからは、ふたりが手を取つてあの世へゆき、蓮のうてなに半座をわけて、千年も萬年も住む心……。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
圓いうてなの上になり下になり、下になつても頭へ血が寄るといふことなく、大地を踏めばいつも健康だ。杳かな創世の日から勞働爭議の今日に至るまで、積みかさね積みかさねられたものがそこにある。
太郎と街 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
うてなを、白日はくじつあるひいだあるひさゝげてた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
高きうてなのあらばあれ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
春のうてなといふべけれ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
妻籠つまごめうてなてんか
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
後またひけるは。汝の家族やからの名のもとにて、第一のうてなに山を𢌞めぐることはや百年餘もゝとせあまりに及べる者は 九一—九三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
夕日のうてなかがやきぬ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
たまうてなに咲き纏ふ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
わがいのちたはれうてな
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しかしてわが目その翼をはこぶをうるかぎり右にても左にてもこのうてなすべてかくの如く見えき 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
今にして眞夏まなつうてな
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
玉のうてな欄干おばしま
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
等しからざる苦しみをうけ、みな疲れ、世の濃霧こききりを淨めつゝ第一のうてなの上をめぐれり 二八—三〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)