腕力ちから)” の例文
「すまねえが親分の鑑識めがね違えだ。」味噌松が仲へはいった。「ま、考えても御覧なせえ。お神さんの腕力ちからであのまさかりが——。」
開けっぱなしで明るくて、智慧と腕力ちからのある奴が、智慧と腕力ちからのあるうちじゅう、お頭になっていられるのだからなあ。ところが裟婆はそうはいかねえ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
肩幅広く、胸張りて、頬に肥肉ししつき、顔まろく、色の黒き少年なりき。腕力ちからもあり、年紀としけたり、門閥もたっとければ、近隣の少年等みな国麿に従いぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けだものめ、口先ばかり達者で、腕力ちからも無けりゃ智慧もねエ、ざまア見やがれ、オイ、閻魔ッ、今頬桁ほおげた叩きやがった餓鬼共ア、グズグズ言わさず——見せしめの為だ——早速片付ちまいねエ」
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
夜目よめなればこそだしもなれひるはづかしき古毛布ふるげつと乘客のりてしなさぞぞとられておほくはれぬやせづくこめしろほどりやしや九尺二間くしやくにけんけぶりつなあはれ手中しゆちゆうにかゝる此人このひと腕力ちからおぼつかなき細作ほそづくりに車夫しやふめかぬ人柄ひとがら華奢きやしやといふてめもせられぬ力役りきえき社會しやくわいつたとは請取うけとれず履歴りれき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
腕力ちからの欲しい若者達が少しの効験しるしでも身に受けたいと、夜昼境内へやって来ては、力柱へ体を打ち付け帰宅かえる時には多少なりとも、賽銭を投げて行ったものだが、き易いのは凡夫の常
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)