トップ
>
翅音
>
はおと
ふりがな文庫
“
翅音
(
はおと
)” の例文
のみならずその時一匹の蜂は、斜に床の上へ舞ひ下ると、鈍い
翅音
(
はおと
)
を起しながら、次第に彼の方へ這ひ寄つて来た。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と思ふ間にくるッと起きあがり、そのまゝ空中に飛びあがると、ブルルンといふ
翅音
(
はおと
)
を立てながら、お縁を飛び出して、庭の空にまひあがつてしまひました。
かぶと虫
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
ある時、今天井に舞ひ上つたと見たジガ蜂が、「ぶあん」といふやうな
翅音
(
はおと
)
とも思へぬやうな大きな音を立てたかと思ふと、急降下で、一直線に落ちて来たことがあつた。
ジガ蜂
(新字旧仮名)
/
島木健作
(著)
壁の上にも硝子天井にも、小指の頭ほどもある大きな銀蠅がベタいちめんにはりついていて、なにか物音がするたびに、ワーンとすさまじい
翅音
(
はおと
)
をたてて飛び立つのだった。
昆虫図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
わざと
大袈裟
(
おほげさ
)
に
頭
(
あたま
)
をかきながら、
夫
(
をつと
)
は
鞠
(
まり
)
を
追
(
お
)
つた。そして、
庭
(
には
)
の一
隅
(
すみ
)
の
呉竹
(
くれたけ
)
の
根元
(
ねもと
)
にころがつてゐるそれを
拾
(
ひろ
)
ひ
上
(
あ
)
げようとした
刹那
(
せつな
)
、一
匹
(
ぴき
)
の
蜂
(
はち
)
の
翅音
(
はおと
)
にはつと
手
(
て
)
をすくめた。
画家とセリセリス
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
▼ もっと見る
お高の繰る糸車の音が、ぶんぶんと、そのうららかな朝の空気をふるわせて聞えてくる、
蜂
(
はち
)
の
翅音
(
はおと
)
にも似たしずかな、心のおちつく柔らかい音である。啓七郎はそれを聞きながら
日本婦道記:糸車
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
翅音
(
はおと
)
をたてて舞っている眼の先の
虻
(
あぶ
)
を眺めていたが、不図其奴が鼻の先に止まろうとすると、この永遠の木馬は、
矢庭
(
やにわ
)
に怖ろしい胴震いを挙げて後の二脚をもって激しく地面を蹴り
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
翅音
(
はおと
)
も伴ひ。
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
すると空に
翅音
(
はおと
)
がして、たちまち一匹の蜜蜂が、なぐれるように薔薇の花へ下りた。
蜘蛛
(
くも
)
は
咄嗟
(
とっさ
)
に眼を挙げた。
女
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
半
(
なかば
)
開いた窓の隙間からは鮮かな新芽の緑が
覗
(
のぞ
)
いて、カアテンの白をそよがす風もなかつた。ぢつと机に向つて腰掛けてゐると、けだるい先生の講義の聲が蜜蜂の
翅音
(
はおと
)
のやうに聞えてくる。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
夜はすっかり
更
(
ふ
)
けていた。もうみんな寝たのだろう、客間のほうもひっそりとしている。部屋の隅で蚊の
翅音
(
はおと
)
がしているし、庭からきりきりきりというような早い夏の鳴虫の音が聞えてくる。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
が、蜘蛛は——産後の蜘蛛は、まっ白な広間のまん中に、
痩
(
や
)
せ衰えた体を横たえたまま、薔薇の花も太陽も蜂の
翅音
(
はおと
)
も忘れたように、たった一匹
兀々
(
こつこつ
)
と、物思いに沈んでいるばかりであった。
女
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さうして
穴
(
あな
)
がすつかり
埋
(
う
)
められてしまふと、
蜂
(
はち
)
は
暫
(
しばら
)
く
穴
(
あな
)
のまはりを
歩
(
ある
)
きまはつてゐたが、やがてぷうんと
翅音
(
はおと
)
を
立
(
た
)
てながら、
黒黄斑
(
くろきまだら
)
の
弧線
(
こせん
)
を
清澄
(
せいちよう
)
な
秋
(
あき
)
の
空間
(
くうかん
)
に
描
(
ゑが
)
きつつどこともなく
飛
(
と
)
び
去
(
さ
)
つて
行
(
い
)
つた。
画家とセリセリス
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
翅
漢検1級
部首:⽻
10画
音
常用漢字
小1
部首:⾳
9画
“翅”で始まる語句
翅
翅虫
翅体
翅無
翅翼
翅脈
翅燕花
翅頭末