総出そうで)” の例文
旧字:總出
けて働く面々も、すぐり抜きたる連中れんじゅうが腕によりたすきを懸けて、車輪になりて立廻るは、ここ二番目の世話舞台、三階総出そうで大出来なり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
消防隊員は総出そうででもって、穴の中にしきりにセメントの溶かしたものをぎいれている。もちろんそれは蟹寺博士の指図さしずによるものであった。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのためきょうは一日中、部屋の者総出そうでで探し、やっと、所在は知れたが、自分らの手に及ばない所へ運ばれているので、ご相談申しあげる次第ともある。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むらじゅうのひと総出そうでで、なにかはやしたてています。そのうち、こちらへくろいものが、あちらのもりなかからげるようにやってきました。ると、自分じぶんうちうしであります。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今宵こよいも八人の道楽仲間を呼び集めて、これに七人の女中が総出そうでで広間を昼のように明るくし
中日は村総出そうでの草苅り路普請みちぶしんの日とする。右左からほしいままに公道をおかした雑草や雑木の枝を、一同らした鎌で遠慮会釈えしゃくもなく切払う。人よく道をひろむを、文義もんぎ通りやるのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新たなる大きい祈願をする時だけ立てたもので、千人がそろうということはむつかしくとも、できるだけは一村各家から総出そうでをして、一どに一本ずつ持ってきて立てるのが本意であった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
顔なじみの近所のお手伝いさんが、ほとんど総出そうでの形で、どの家かの勝手口の門の前に三四人ずつかたまって、何かひそひそ話をしながら、通りへ眼をくばっていた。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
長屋ながやじゅうのものが、総出そうでとなって、このどく老職人ろうしょくにん周囲しゅういあつまりました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
町内の附合つきあいまたは組合の義理と称して、各戸総出そうでをもって行列を作り、一定の路筋みちすじを廻歴した慣習のごときも、これを個々の事変に際する協力といわんよりは、すこぶる葬礼祭礼などの方式に近く
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一家いっか総出そうでの時は、大戸をして、ぬれ縁の柱に郵便箱をぶら下げ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼女の持ち役である南海なんかい女神めがみはその途中で演技が済み、あとは終幕が開くので彼女をのぞく一座は総出そうでの形となって、ひとりジュリアは楽屋に帰ることができるのであった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
若い男が総出そうでで一つ一つ去年の苅株かりかぶを堀りかえして行く。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)