空華くうげ)” の例文
人やゝもすれば、人生を夢幻と云ひ、空華くうげと云ふ、一念ここに至れば、空華の根柢に充実せる内容あり、夢幻の遷転影裡せんてんえいり猶且なほか煢然けいぜんたる永久の覚醒かくせいあり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「は?」彼は覚えず身をかへして、ちようと立てたる鉄鞭にり、こはこれ白日の夢か、空華くうげの形か、正体見んと為れど、酔眼のむなしく張るのみにて、ますまれざるはうたがひなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すさまじきまで凝り詰むれば、ここ仮相けそう花衣はなごろも幻翳げんえい空華くうげ解脱げだつして深入じんにゅう無際むさい成就じょうじゅ一切いっさい荘厳しょうごん端麗あり難き実相美妙みみょう風流仏ふうりゅうぶつ仰ぎて珠運はよろ/\と幾足うしろへ後退あとずさ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
五郎作は実家が江間氏えまうじで、一時長島ながしま氏をおかし、真志屋の西村氏をぐに至った。名は秋邦しゅうほうあざな得入とくにゅう空華くうげ月所げっしょ如是縁庵にょぜえんあん等と号した。平生へいぜい用いた華押かおうは邦の字であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その新富座の茶屋丸五まるごの二階。盛時をしのばせる大きな間口まぐちと、広い二階をもったお茶屋が懇意なので、わたしは自作の「空華くうげ」という踊りの地方じかた稽古所けいこじょに、この二階をかりてあてた。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しかしながら今はた如何いかん空華くうげの一現でその勢力は夢痕むこんの尋ぬべからざるが如きものと為りおわった。即ちかくの如く最後の勝利の王道に在るは、これ天の吾人に教えて偽らざるものである。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
いたずらに空華くうげと云い鏡花きょうかと云う。真如しんにょの実相とは、世にれられぬ畸形きけいの徒が、容れられぬうらみを、黒※郷裏こくてんきょうりに晴らすための妄想もうぞうである。盲人はかなえでる。色が見えねばこそ形がきわめたくなる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
空華くうげ随筆 空華談叢
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
前回に書いた舞踊研究会の「空華くうげ」の時、松岡さんと、私の好みと、鈴木鼓村さんの箏曲そうきょくとがぴったりしたので、松岡さんが進んで会員となられたのだが、今度は、その松岡さんが随分お疳癪かんしゃく
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
空華くうげ」の時のこともあるし、箏は浜子に頼みたいといった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)