碧玉へきぎょく)” の例文
更にまたさまざまの地獄から沸泉ふっせん湯煙ゆけむりを立てて流れて行く水路の底が美くしい碧玉へきぎょくの色に染まっていることを見逃すことは出来なかった。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
と言うと、二人の海女は、身をおどらして、碧玉へきぎょくたたえたような——少し底濁りのした水槽へサッと飛込みました。
黒襲くろがさね白茶七糸しらちゃしゅちんの丸帯、碧玉へきぎょくを刻みし勿忘草フォルゲットミイノットえりどめ、(このたび武男が米国よりて来たりしなり)四はじえみを含みて、嫣然えんぜんとして燈光あかりのうちに立つ姿を
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
春は草が青あおとしげって、白い小ぎくが碧玉へきぎょくをしきつめたもうせんの上に白い星をちりばめていたし、芽出めだしやなぎやポプラの若木わかぎからはねっとりとやにが流れていた。
黄色な草穂くさぼはかがやく猫睛石キャッツアイ、いちめんのうめばちそうの花びらはかすかなにじふく乳色ちちいろ蛋白石たんぱくせき、とうやくの碧玉へきぎょく、そのつぼみは紫水晶アメシストの美しいさきをっていました。
静かな、切れるようなめたい風の中で、碧玉へきぎょくのような大濤おおなみに揺られながらの海難……。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一七九三年の恐るべき共同墓地となったマドレーヌの墓場は、ルイ十六世およびマリー・アントアネットの遺骨がそのちりにまみれていたので、いまや大理石や碧玉へきぎょくを着せられた。
厚いかしの木の扉飾りには鼈甲べっこうや象牙や金銀や碧玉へきぎょくさえも嵌め込まれているのであった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
卑弥呼はひじに飾ったくしろ碧玉へきぎょくを松明に輝かせながら、再び戸の外へ出て行った。若者は真菰まこもの下に突き立ったまま、その落ち窪んだ眼を光らせて卑弥呼の去った戸の外を見つめていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
袁氏はまた懐から碧玉へきぎょく環飾わかざりを出して老僧の前へ置いて
碧玉の環飾 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
水は今日入れ換えたばかり、碧玉へきぎょくのごとく澄んで、蝋燭の光に底まで読めます。その中をお村の裸体は、重りを引入れられて、ユラユラと沈んで行きます。
軒蛇腹道コルニッシュ・ロードとも別称されるほど、しかく絶壁の上につけられた海岸道路から、松の生えた小島などを、南欧特有の青い空のもと碧玉へきぎょくの海面に見出しながら、ドライブする趣きは
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
碧玉へきぎょくのすずらんが百の月があつまったばんのように光りながらこうからいました。
窓近くさしでたる一枝は、枝の武骨なるに似ず、日光のさすままに緑玉、碧玉へきぎょく琥珀こはくさまざまの色に透きつかすめるその葉の間々あいあいに、肩総エポレットそのままの花ゆらゆらと枝もたわわに咲けるが
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その時ちょうど風が来ましたので、うめばちそうはからだを少しげてパラリとダイアモンドのつゆをこぼしました。つゆはちくちくっとおしまいの青光をあげ碧玉へきぎょくそこしずんで行きました。