石壁いしかべ)” の例文
納戸色なんどいろ、模様は薄きで、裸体の女神めがみの像と、像の周囲に一面に染め抜いた唐草からくさである。石壁いしかべの横には、大きな寝台ねだいよこたわる。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第二十四圖だいにじゆうしずかべかゝつてゐるうしうま鹿しかなどのはかれ洞穴ほらあななか石壁いしかべりつけたり、またいたりしたうつしであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ほりという堀には水がいっぱいで、堀ばたにはフキの花がひらき、石壁いしかべの上にえている草のしげみは、つやつやとして褐色かっしょくになっています。
ボウダの国のわが友の、思ひも寄らぬまがつみに、かゝりて今は石壁いしかべの、ひとやのうちにしばられて、われのゆゑにぞ苦しむと、聞く憂事うきごとのあぢきなき
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
牛の牢という名は、めぐりの石壁いしかべけずりたるようにて、昇降のぼりくだりいとかたければなり。ここに来るには、よこみちを取りて、杉林すぎばやし穿うがち、迂廻うかいしてくだることなり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
南蛮寺なんばんじ絵蝋燭えろうそくは一つ一つふき消されて、かなたこなたからりだされた四、五十人の浪人ろうにんが、いずれも覆面黒装束ふくめんくろしょうぞくになって、荒廃こうはいした石壁いしかべ会堂かいどうへあつまってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茶いろになった石壁いしかべが剣形迫持せりもちの形をして
やや中ごろまでのぼってくると、道は二股ふたまたに分れて右をあおぐと、石壁いしかべどう鉄骨てっこつ鐘楼しょうろうがみえ、左をあおぐと、松のあいだにあか楼門ろうもんがそびえていた。燕作はひだりの朱門あかもんへさしてけのぼった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石壁いしかべの柱が