矢文やぶみ)” の例文
あらかじめ矢文やぶみをもって予告のあった敵方の客将黒田官兵衛孝高よしたかが、いま輿こしにのって、山下の柵門さくもんまで来た——というらせであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その酒宴の最中に、一夜、庭さきの暗がりから一本の矢文やぶみが飛来して……矢文、矢のさきに手紙がはさんである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「もう、いくさも今日りじゃ。城方は兵糧がない上に、山田右衛門作えもさくと申す者が、有馬勢に内応の矢文やぶみを射た」という噂が人々の心を引き立たせた。功名も今日りじゃ。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
駒井甚三郎は、その時に矢文やぶみの紙片を取って、七兵衛に読み聞かせました——
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
森は田辺にちゃくいたし、景一に面会して御旨おんむねを伝え、景一はまた赤松家の物頭ものがしら井門亀右衛門いかどかめえもんはかり、田辺城の妙庵丸櫓みょうあんまるやぐら矢文やぶみを射掛け候。翌朝景一は森を斥候の中に交ぜて陣所を出だしり候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
何ういう行間違ゆきまちがいか知りませんが、花魁はあなたのおたねを宿してゝも、あなたが此方こちらへ御窮命になりましたから、日文ひぶみ矢文やぶみを送りたくっても、そうもなりません処から、花魁がくよ/\思い詰め
すると城内の石倉の上のやぐらから一本の矢が濠をこえて来た。並河掃部なみかわかもんが拾い取ってすぐ光忠へ捧げに来た。矢文やぶみいつけてあったからである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この矢文やぶみには、どういう仔細しさいで、そうみんなが顔いろかえて、このうすぎたない一個の壺を手に入れようとあせっているのか、その訳がすっかり書いてある。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ははあ、矢文やぶみだな」
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
独りひそかに、砦の高櫓たかやぐらへのぼって行った陳登ちんとうは、はるか曹操の陣地とおぼしき闇の火へ向って、一通の矢文やぶみを射込み、何喰わぬ顔をしてまた降りてきた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時まだ吾妻橋あづまばし下の河原に小屋をむすんでいた左膳のもとへ、泰軒が橋の上から矢文やぶみをはなち、それによって左膳も、壺ののむ柳生の埋宝の秘密をはじめて知ったというわけ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
矢文やぶみをつかわして、会談を求め、彼の手引に依って、密かに、後藤とも面会いたし、そのいがあって、昨夜深更、ことし八歳になる我が子を郎党に負わせて訪ねて来たものでござります
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
結び文をはさんだ矢……矢文やぶみなんです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「今しがた、弾正曲輪だんじょうぐるわ外土居そとどいを見廻っていると、土民のすがたにやつした男が、河向うから声をかけ、矢文やぶみとしてこれを射込んで来ました。……どうやらお味方の密使らしく思われました」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、寄せ手は、城兵の心理をついて「降伏して出る者はみな助けん。正成以外はその罪を問わず」という矢文やぶみを、土塁どるい竹楯たけだての内へむやみに射こんでみたが、それにもなんの反応はない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵はそれの矢文やぶみを、孤塁こるいの兵に射込み、それには
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「待て待て。それは矢文やぶみのようだ。これへ持て」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矢文やぶみ、見た、承知)
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矢文やぶみ
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)