百年ももとせ)” の例文
百年ももとせに一とせ足らぬ九十九髪つくもがみ」というような人たちの中へ、目もくらむような美しい天女が降って来たように見えるのも
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一つは枯れて土となり、一つは若葉え花咲きて、百年ももとせたたぬ間に野は菫の野となりぬ。この比喩ひゆを教えて国民の心のひろからんことを祈りし聖者ひじりおわしける。
詩想 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
鼓草たんぽぽの花の散るように、娘の身体からだは幻に消えても、その黒髪は、金輪こんりん、奈落、長く深く残って朽ちぬ。百年ももとせ千歳ちとせせず、枯れず、次第に伸びて艶を増す。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つえにすがりてよろよろと、本の藁屋わらやへかえりけり、百年ももとせうばと聞こえしは、小町が果ての名なりけり……
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さては操を守りて百年ももとせいたづらぶしのたぐひ、いづれか哀れならざるべき、されど恋に酔ひ恋に狂ひ、この恋の夢さめざらんなかなかこの夢のうちに死なんとぞ願ふめる
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ゆるらかに幾尺の水晶の念珠ねんじゅを引くときは、ムルデの河もしばし流をとどむべく、たちまち迫りて刀槍とうそうひとしく鳴るときは、むかし行旅こうりょおびやかししこの城の遠祖とおつおや百年ももとせの夢を破られやせむ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
唯円 お師匠様の百年ももとせの御寿命をいのりたてまつるのでございますけれど…………
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
けれど、その年の夏から、翌元禄十五年の秋までの、一年余りの佗暮わびぐらしは、丹女にとって、もう一度あらたに十内へして、百年ももとせのちぎりを結び直したほど、欣ばしくもあり楽しくもあった。
幕が揚げられて「百年ももとせにあまる」老人が橋掛りへ歩み出た。見処はしんとする。老人は「百万」のシテの如く、狂ひ笹を肩にかついでゐる。地味な小袖の肩をぬいで、赤い下着が現はれてゐる。
枕物狂 (新字旧仮名) / 川田順(著)
ある時はティチアンのごと百年ももとせの豐けきいのち生きなむ心
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
百年ももとせを四かえりまでに過ぎ来にし
百年ももとせの長き眠りの覚めしごと
田舎がえり (新字新仮名) / 林芙美子(著)
百年ももとせの長き眠りのめしごと
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ああ百年ももとせか、二十はたとせか。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
と、一年越、十年ととせも恋しく百年ももとせ可懐なつかしい声をかけて、看護婦のかたわらをすっと抜けて真直まっすぐに入ったが
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ゆるらかに幾尺の水晶の念珠ねんじゅを引くときは、ムルデの河もしばし流れをとどむべく、たちまち迫りて刀槍とうそうひとしく鳴るときは、むかし行旅をおびやかししこの城の遠祖とおつおや百年ももとせの夢を破られやせん。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
まだ、急な事ではないが、十兵衛はやがて諸国遍歴へんれきに出て、短くとも、ここ五、六年は帰らぬ身じゃ。そちさえ嫌でなければ、百年ももとせの誓いをして立ちたい。また、いやなものならば——ぜひもないが
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百年ももとせに一年足らぬ九十九髪つくもがみわれを恋ふらし面影に見ゆ
枕物狂 (新字旧仮名) / 川田順(著)
百年ももとせの土、二十はたとせの
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
百年ももとせいくさもなさん春は来ぬ
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百年ももとせきり琴となり
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「おろか、百年ももとせも」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)