白面はくめん)” の例文
と、署長は、白面はくめん無髯むぜんに、金縁眼鏡をかけているというだけの、至って特徴のない好男子の池谷与之助の顔に心の中で唾をはいていた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
民権論者とて悉皆しっかい老成人に非ず。あるいは白面はくめんの書生もあらん、あるいは血気の少年もあらん。その成行なりゆき決して安心すべからず。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これを亡ぼすのは、さのみむずかしいとは思わぬが、ただ恐るべきはかの妲己という妖女で、彼女かれの本性は千万年のこう金毛きんもう白面はくめんの狐じゃ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして今や、白面はくめん二十六歳の青年にして、すでに上杉家随一の器量者きりょうものと、四隣しりんに存在を知られている。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同いちどうこれはとおそつゝしみけるに、やゝありて幸豐公ゆきとよぎみ御顏おんかほなゝめ見返みかへたまひ、「もくもく」とたまへば、はる末座まつざかたにて、いらへつ、白面はくめん若武士わかざむらひすこしくれつよりずりでたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と例の九州男のY君が、一人の実直そうな白面はくめんの若者を引っ張って来た。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
もう一人は白面はくめんの青年で、形のよい背広に身を包んでいた。この手術者は法医学教室の蝋山ろうやま教授、白面の青年は西一郎と名乗る男だった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかも今のあなたはさのみ偉い人でもない、単に一個の白面はくめん(若く未熟なこと)書生に過ぎませんから、今こそ初めて多年の恨みを報いることが出来たのです
まだ十七の白面はくめんでしかないが、六歳の皇子を奉じて、その大任につくことになり、その朝、親しく天皇から詔、御衣、御馬などを賜わって、千里のさき奥羽の中心地に
犬山の町長さんは若い白面はくめん瀟洒しょうしゃな背広服の紳士であった。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
白面はくめん黄毛くわうまう不良青年ふりやうせいねん見紛みまがふべくもないいたちで。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いま都下に絶対の信用をはくしている名探偵青竜王の正体は、白面はくめんの青年西一郎だったのだ。そして吸血鬼にほふられた四郎少年こそは、彼と血を分けた愛弟あいていだったのだ!
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは九月のなかばから白面はくめん金毛きんもう九尾きゅうびの狐が那須の篠原しのはらにあらわれて、往来の旅びとを取りくらうは勿論、あたりの在家ざいけをおびやかして見あたり次第に人畜をほふり尽くすので
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おそらく兄弟であろう、兄は二十歳前後、弟は十五、六であるが、いずれも俳優かとも思われるような白面はくめんの青年と少年で、服装も他の芸人に比べるとすこぶる瀟洒しょうしゃたる姿であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それを二十歳を越えたばかりの白面はくめんの青年学徒が、みごとに手玉にとっているのであるから、なんといってよいか、じつに原子力行使げんしりょくこうしにつぐ劃期的な文明開拓だといわなければならない。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)