白薔薇しろばら)” の例文
物音はただ白薔薇しろばらむらがるはちの声が聞えるばかりです。白は平和な公園の空気に、しばらくはみにくい黒犬になった日ごろの悲しさも忘れていました。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
修練女が誓願式を行なう日には、皆で最も美しい服をつけてやり、白薔薇しろばらの帽をかぶらせ、髪をつや出しして束ねてやり、それから彼女は平伏する。
「するとこれが、踏みにじった婚礼の象徴シンボルなんですね。」法水はポケットから泥塗れにつぶれた白薔薇しろばらを取り出して
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
住吉の浦は、眼のおよぶ限り、白薔薇しろばらをつないだような波である。冬とも思えない磯の香が陽に煙っている。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じゆんゆづつて、子爵夫人ししやくふじんをさきに、次々つき/″\に、——そのなかでいつちあとに線香せんかう手向たむけたが、手向たむけながらほとんゆきむろかとおもふ、しかかをりたかき、花輪はなわの、白薔薇しろばら白百合しろゆり大輪おほりん花弁はなびら透間すきま
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼女が次の年に「白薔薇しろばら」を書いたなかに、赤襟、唐人髷の美しいお嬢さまが、九段くだんの坂の上をもの思いつつ歩く姿を、人の目につく黄八丈きはちじょうの、一ツ小袖に藤色紋縮緬ちりめん被布ひふをかさね——とあるのは
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
白薔薇しろばらの 造化の花瓣くわべん
そう考えたので、彼は彼女のそばへそっと寄って、とげのある白薔薇しろばらさわるように
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)