癇癪玉かんしゃくだま)” の例文
当の犯罪者の少年は、癇癪玉かんしゃくだまを一緒に、三つばかりぶつけたといっておりますから、そんな大した音のしなかったのは確かです。
若杉裁判長 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
父は黙ってまじまじと癇癪玉かんしゃくだまを一時にたたきつけたような言葉を聞いていたが、父にしては存外穏やかななだめるような調子になっていた。
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あんな目にって、ほうほうのていでわが家へ逃げ込んで来たのだから、目がさめるや否や、癇癪玉かんしゃくだまが勃発し、自暴やけがこみ上げて
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし癇癪玉かんしゃくだまも、猛勇も際限があった。やがて淀町の焼跡の辻までかかると、精力の燃えがらになって彼は倒れていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くさむらの中からぬっとり出して来て笠をけ、脇差わきざしを抜いて見得を切るあの顔そっくり。その顔で癇癪玉かんしゃくだまを破裂させるのだから、たいがいの者がぴりぴりした。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
自分は俯向うつむきながら、今に兄のこぶしが帽子の上へ飛んで来るか、または彼の平手ひらてが頬のあたりでピシャリと鳴るかと思って、じっと癇癪玉かんしゃくだまの破裂するのを期待していた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まどろこしい郊外電話に癇癪玉かんしゃくだまを爆発させながら、それでもようやく警察署を呼び出し、自動車取押とりおさかたの手配をするとともに、また至急しきゅう自動車をゴルフ場へ廻すように頼んだ。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうすると怒ったのおこらないのって、あの有名な癇癪玉かんしゃくだまでしょう、それを破裂させたのです。馬鹿ッ、貴様はッて怒鳴ったのですけれど、あたしゃあこわいことはないから言ってやりましたわ。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
芸妓げいしゃも自家これに客となって、祝儀を発奮はずみ、ぎょくを附けて、弾け、飲め、唄え、酌をせよ、と命令を奉ぜしめた時ばかり、世の賤業を営むものとおとしめてよろしいけれども、臂鉄砲ひじでっぽう癇癪玉かんしゃくだまを込めた
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「君はそれが分らないのか」明智は癇癪玉かんしゃくだまを破裂させた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
悠々たる白雲も、ついに少し癇癪玉かんしゃくだまれてきて、向うの岸を見つめていたが、どうも遠目にはっきりと見えないのをもどかしく思いました。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大気燄だいきえんである。奥歯でつぶした癇癪玉かんしゃくだまが炎となって鼻の穴から抜けるので、小鼻が、いちじるしくいかって見える。越後獅子えちごじしの鼻は人間がおこった時の恰好かっこうかたどって作ったものであろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
博士はとうとう癇癪玉かんしゃくだまを破裂させた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
癇癪玉かんしゃくだま
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついにはとうとう先方の癇癪玉かんしゃくだまを破裂させて、お角さんだけはお先へ御免蒙って、名古屋へ乗りつけてしまうという結果にまで立至らせたのです。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
脈どころじゃございません、この通り、癇癪玉かんしゃくだまが破裂いたしました、さあ、こうなった以上は、矢でも鉄砲でも持っていらっしゃい、殿様のお出しなさる試験を
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大名のお通りには頓着なく、米友が梯子抜けの芸当にとりかかろうとする時に、お供先の侍が、癇癪玉かんしゃくだまを破裂させたような声で、見物は、はっときもをつぶしました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)