痛哭つうこく)” の例文
文明を養いなすべき任に当たりたる学者にして、その精神の日に衰うるを傍観してこれを患うる者なきは、実に長大息すべきなり、また痛哭つうこくすべきなり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今目の前に蘇武の純粋な痛哭つうこくを見ているうちに、以前にはただ蘇武の強烈な意地とのみ見えたものの底に、実は
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
と、盧植は、身の不幸を悲しむよりも、さすがに、より以上、上下乱脈の世相の果てを、痛哭つうこくするのであった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
末頼母すえたのもしく存じ奉候処、右様の次第恐入り奉り候御事に御座候へども、別段歎息の至に存じ奉り候。かつ又国家凶事相続き御経済の程も思ひ痛哭つうこくの至に候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
燕王張玉の死を聞きて痛哭つうこくし、諸将と語るごとに、東昌とうしょうの事に及べば、曰く、張玉を失うより、われ今に至って寝食安からずと。なみだ下りてまず。諸将も皆泣く。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたくしは取るものも取敢とりあえずその夜のうちに随心院へ参り、雑兵劫掠ぞうひょうきょうりゃく顛末てんまつを深夜のことゆえお取次を以て言上ごんじょういたしましたところ、太閤たいこうにはお声をあげて御痛哭つうこくあそばしましたよし
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
その笑が痛哭つうこくであろうとも、自嘲であろうとも、解除であろうとも、それはどうでも好い。ただおおいに笑ってやれ。そう思っているのだ。たとえたわけとののしられても、彼は満足しているのだ。
おたがい何とも痛哭つうこくのほかはないが、すでに事定まった今日となっては、ひとえにお跡目あとめを正し、御遺業をうけついで、御在世の日にまさる忠勤を励ましあうこそ、臣下の道でもあり
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしは取るものも取敢とりあへずその夜のうちに随心院へ参り、雑兵劫掠ぞうひょうきうょりゃく顛末てんまつを深夜のことゆゑお取次を以て言上ごんじょういたしましたところ、太閤たいこうにはお声をあげて御痛哭つうこくあそばしましたよし
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
監察御史かんさつぎょし葉希賢しょうきけん、臣が名はけん応賢おうけんたるべきことうたがい無しともうす。おのおの髪をえてちょうひらく。殿でんに在りしものおよそ五六十人、痛哭つうこくして地に倒れ、ともちかってしたがいまつらんともうす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
孔明は天を仰いで痛哭つうこくした。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、痛哭つうこくした。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)