かぎ)” の例文
旧字:
冉求ぜんきゅう曰く、子の道をよろこばざるに非ず。力足らざればなりと。子曰く、力足らざる者は中道にして廃す、今なんじかぎれりと。——雍也篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
家の内部はいめぐらした竹垣にさえぎられて見えない。高い屋根ばかりが、初夏の濃緑な南国の空をかぎっている。左手に海が光って見える。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
然し、友よ、私は、只一部分丈に視野をかぎって、今は、青い時だ、俺はその青い中でも一番強い青色を持っているのだぞ、と云って誇る心掛にはなりたくないと思う。
一粒の粟 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
四周を紫色や濃紺の山々にかぎられた、夏草茂る盆地……ゆるやかな一面の大野原……しかもしかも、その野草の中ほど小高い丘の上に二、三本の松の木がヒョロヒョロとそびえて
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
その周囲をパノラマのようにかぎって居る一々の山の名は、山岳に通じない吾等に其が何山、是が某岳と指示することは出来ないが、およそ関東の高山は、大半其姿を表わして居るので
武甲山に登る (新字新仮名) / 河井酔茗(著)
ちかく水陸をかぎれる一帯の連山中に崛起くっきせる、御神楽嶽飯豊山おかぐらがたけいいとよさんの腰を十重二十重とえはたえめぐれる灰汁あくのごときもやは、揺曳ようえいしていただきのぼり、る見る天上にはびこりて、怪物などの今や時を得んずるにはあらざるかと
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見ゆる限り草蓬々ぼうぼうたる大野原! 四周をかぎって層々たる山々が、屏風びょうぶのごとくに立ちつらなり、東北方、山襞やまひだの多い鬱然うつぜんたる樹木の山のみが、そのすそを一際近くこちらにいている。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
かぎられて、牛小屋と納屋とになっている。牛はいない。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)