生活くら)” の例文
解散して以来、ずっと古屋敷に、隠者のように生活くらしていた。日課とするところは、道了塚へ行って、我々の罪悪の犠牲になった人々の菩提を
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
殊にわしは、家に母上の笑顔えがおがあり、家族どもがみな嬉々ききとして生活くらしていてくれれば、何よりも自分も楽しいことと思う
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこにその娘がどう生活くらしているかということも知らないばかりか、知ろうとおもうこころも無いのだから、無論その女をどうこうしようというような心はゆめにも持たぬ。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
去つた女房か去られた女房かはわかりませんが、曾ては一緒に生活くらした女の、おとろへるどころか、更に磨きのかゝつた美しさに、妙な心持なつたのも無理のないことでした。
保雄はいて仕舞はうと言つた事もあつたが、美奈子は良人をつとと自分との若い血汐もたましひも元気も皆これこもつてあると思つて、如何に二人が貧苦に痩せ衰へても、又如何に二人が襤褸ぼろげて生活くらしても
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
……勇を現わすということは、表面おもて立って生活くらす手段に過ぎない。だが余り表面立つと、その生活し方が窮屈になる。それは偶像にされるからだ
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ある堂守どうもりが住んでいた後に、住蓮と安楽房がしばらくここに生活くらしていたことがあるので、貧しいかしぎの道具やあかりをともす器具などはあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今の境遇から引き上げて、この私の相談相手とし、私と一緒に生活くらして戴きたいと、このように思うのでございます
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
庭へまわって来て、角三郎の部屋の縁に腰をやすめ、夫婦ふたりになって生活くらす日の陽ざしをうっとりと思ってみる。
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここにこうして生活くらしていることは、一見矛盾のように思われるけれど、その実決してそうではなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「剣は、先祖伝来の物で、大事な物には違いありませんが、くつむしろをつくって生活くらしているあいだは、張卒から貰ったこれでも決して間にあわないこともありませんから……」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平生は芋野老ところなどを掘りまして、乏しく生活くらしておりますにも似ず、目前めさきの利害などには迷わされず、義を先にし節をたっとび、浮薄のところとてはございません。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あのようにまどかに、夫婦みょうとが、一つ道を歩み、一つ唱名をして生活くらすことができたら、ほんに、幸福であろうに」と、凡下たちも、自分たちの、ゆがんでいる家庭や、倦怠期けんたいきに入っている夫婦仲や
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城中無数の男女どもは穏かに生活くらしているものの、一旦彼女が不在になったが最後、その無数の男女の中には、彼女に不平の者もあり、それが俄然一斉に立って
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
父夏彦の首級をかかえた憐れな孤児みなしごの久田姫は、その後一人城を離れ神宮寺村に住居すまいして、聖母マリヤと神の子イエスとを、守り本尊として生活くらしたが、次第に同志の者も出来
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私の実の父も母も飯田の城下にすこやかに現在ただいま生活くらしておりますものを、臨終いまわの妄執だの亡魂だのと、らちもないことをおおせられる。おたわむれも事によれ、程度ほどを過ごせば無礼ともなる。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いやな下界を流浪し歩き、こんな香具師やしのような真似までして、厭な下界人の機嫌を取り、生活くらして行かなければならないという、憐れはかない身の上に成り下ってしまったのでございます
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
でも一人江戸へ残ったところで、生活くらして行くことは出来そうもなかった。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何故だろう? 狭い紙帳を天地とし、外界そとと絶ち、他を排し、自分一人だけで生活くらすようになったからである。そういう生活は孤独生活であり、孤独生活が極まれば、憂欝となり絶望的となる。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それにしてもここの人達は、何をして生活くらしているのでしょう?」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おおお前たちかえ、よく来てくれたねえ。でもいよいよお別れだよ。さて浮藻や小次郎や、昔のことは忘れておくれ。そうして今度こそ本当に、夫婦になって生活くらしておくれ! ……お前たちどうぞ喜んでおくれ、また妾は飛天夜叉になったのだから!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)