生写いきうつ)” の例文
旧字:生寫
「おう……天目山てんもくざんであいはてた、父の勝頼、また兄の太郎信勝のぶかつに、さても生写いきうつしである……。あのいくさのあとで検分けんぶんした生首なまくびうり二つじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一図に示すはこれらに近縁あるポリサックム属の二種、いずれも田辺で採った。瞥見ちょっとめにはこれも馬の糞生写いきうつしな菌である。
此の子が不思議な事には、新吉が夢に見た兄新五郎の顔に生写いきうつしで、鼻の高い眼の細い、気味の悪い小児こどもが生れると云う怪談の始めでございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうしてその記憶のうちにタッタ一つ美しいモヨ子……一千年前の犠牲であったたい夫人に生写いきうつしの姿がアリアリと浮出した
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
元気な小僧だし、己の若くっていい男だった時に生写いきうつしだからよ。いつも己はお前が仲間にへえってくれて、紳士で死んでもれえてえもんだと思ってた。
博士は慌てて湯槽ゆぶねから飛び上つた。そして流し場へきちやうめんに坐つて手をついた。その恰好が蛙に生写いきうつしだつた。
彼と生写いきうつしの、双生児の片割とまで云われていた菰田が、大金持の菰田が、やはり癲癇病みであることを、無意識のうちに意識していなかったとは云えないのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
リケットの情婦グヰンが娘に生写いきうつしであるを種に、A夫人は娘のスエーターを剥取ってグヰンに着せ、ほんものゝA嬢と見せかけて、大胆に海浜旅館へ乗込んだのである。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
彼にそっくり生写いきうつしの、十二歳になる、人相の悪い腕白小僧だ。世間の人々は、テルソン銀行が大まかなやり方でその雑役夫を使ってやっているのだということを承知していた。
「ほんとに、お生写いきうつし……どうしてこんなに上手にかけるものでございましょう」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「人間じゃございませんが、六兵衛にそっくりそのまゝ生写いきうつしですから、尚おのこと他人の空似でございましょう。下顎が上顎よりも出っ張っていて、身体まで真っ四角でございます」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
伝役もりやく萩之進らとかたらって、たまたま通りあわした野伏乞食のぶせりこつじきの子が源次郎さまに生写いきうつしなのをさいわい、金をあたえて買いとり、偽の主君をつくりあげ、なにくわぬ顔で帰城したのだという取沙汰とりざた
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
日ごとに月代さかゆきもまだその頃には青々として美しく、すらりとしてせい高く、長いおとがいに癖のある細面ほそおもての優しさは、時の名優坂東三津五郎ばんどうみつごろう生写いきうつしといたる処の茶屋々々にいいはやされるが何よりも嬉しく
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
其の顔を新吉が熟々つく/″\見ると夢に見ました兄新五郎の顔に生写いきうつしで、新吉はぞっとする程身の毛立って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
驚くべきことには、仮面めんは余りにも正成の顔に生写いきうつしだった。しかし、いわれなきことではない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
髪の刈り方から、口髭くちひげの具合、いくらか頬のこけたところまで、全く生写いきうつしなんだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
昼間ひるまの感情の激動で頭が乱れてもいたし、粗野な振舞のこの生写いきうつしの人間と一緒にそこにいるのが夢のように思れもするので、チャールズ・ダーネーはどう答えていいかまごついた。
「第一は君の本質、第二は君が亡くなった息子さんに生写いきうつしだからだそうだ」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
貴方に生写いきうつしじゃありませんか。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼の顔や姿や声音こわねなどが、どの様に源三郎に生写いきうつしであろうとも、それで以って、源三郎昵懇じっこんの人々をあざむきおおせようとも、舞台の衣裳を脱ぎ捨てて扮装を解いた閏房けいぼういて、赤裸々せきららの彼の姿を
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところが面白いことには哲彦がこの叔父に容貌性格とも生写いきうつしです
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)