琵琶行びわこう)” の例文
かの白楽天の琵琶行びわこうの話を湓江ぼんこうの湖上に聞くような気持にとらわれていて、そのかんは無心な燈火ともしびさえうっとりとしているのであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隴西ろうせい李白りはく襄陽じょうよう杜甫とほが出て、天下の能事を尽した後に太原たいげん白居易はくきょいいで起って、古今の人情を曲尽きょくじんし、長恨歌ちょうこんか琵琶行びわこうは戸ごとにそらんぜられた。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「まあ初めは古人の作からはじめて、追々おいおいは同人の創作なんかもやるつもりです」「古人の作というと白楽天はくらくてん琵琶行びわこうのようなものででもあるんですか」「いいえ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
洞庭湖どうていこ杜詩とし琵琶行びわこうの文句や赤壁せきへきの一節など、長いこと想い出すおりもなかった耳ざわりのいい漢文のことばがおのずから朗々ろうろうたるひびきをもっくちびるにのぼって来る。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これは白楽天はくらくてんの詩「琵琶行びわこう」のはじめの句だが、いまの宋江そうこうの身は、そんな哀婉あいえんなる旅情の懐古にひたりうるどころではなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この掲陽嶺けいようれいを越えれば、まもなく道はかの白楽天はくらくてんの“琵琶行びわこう”でも有名な潯陽江じんようこうの街を見る。——そして水と空なる雄大な黄色い流れは、いわずもがな、揚子江ようすこうの大河であった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その千変万化の音階を、の名で申し上げるよりも、あなたもご存じでございましょう、白楽天の『琵琶行びわこう』という詩のうちに、琵琶の音いろがよく形容されてありました。——それは
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
穆家ぼくけの美しい末娘が琵琶びわをかかえて、この地方の名所、潯陽江じんようこうのゆかりにちなみ、かの中唐ちゅうとうの詩人白楽天はくらくてんがそこの司馬しば左遷させんされたときに作ったという“琵琶行びわこう”を聴かせてくれたことである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この潯陽じんよう城の船着きは、むかし白楽天はくらくてんとかいう詩人うたびとが、琵琶行びわこうっていう有名な詩をのこした跡だっていうんで、琵琶亭びわていがあるし、それから船で琵琶をいて、旅のお客さまにとぎをするおんながいるんでさ。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その撥音ばちおとは、かの琵琶行びわこうの詩句をかりていうなら——
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……潯陽江頭じんようこうとう、さながら、ここは琵琶行びわこうの詩」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)