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爲術
盜みたりとの言懸りは是れも其方が
仕業なるべし有體に白状せよと申さるゝに久兵衞
心の
中に今度の事は
其節五兵衞と
突合になり一旦白状したれば今さら
爲術なけれども百兩の金は
何所までも文右衞門に
負せ
渠を
三人
寄ど
文珠さへ授けぬ
奸智の
智慧袋はたいた
底の
破れかぶれ
爲術盡し
荒仕事娘に
逢すと悦ばせて
誘引出すは斯々と忽ち
極る惡計に
獻つ
酬れつ飮みながらとは云ふものゝ
此の
幕は餘り
感心せぬ事成れば
姉御と己と
鬮にせんと
紙縷捻つて差出せばお定は引て
莞爾笑ひ
矢張兄貴が當り鬮と云はれて三次は
天窓を
相成ぬぞ此段
屹度申渡すぞと
嚴敷申付られたり因て五兵衞は
爲術なく畏まり奉つるとて夫れより一同
腰懸へ
下り五兵衞は八五郎に向ひ今仰せ渡されの
儀は何卒持參金ばかりにて
勘辨致し
呉られよと申ければ
側に聞居たりし後藤半四郎は進みより
否々道具類とても決して勘辨相成ず彼是云て
埓明ずは貴樣が
嫁のお秀へ毎夜々々不義を