燭光しょっこう)” の例文
そして或る夜、——元井エンジが晩めしを済ませ、燭光しょっこうの弱い電燈の下へ将棋盤を据えて、例のとおり自分に話しかけながら駒を並べた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
長持は座敷の真中に持ち出され、一警官の手によって、無造作むぞうさに蓋が開かれた。五十燭光しょっこうの電燈が、醜く歪んだ、格太郎の苦悶の姿を照し出した。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けっぱなしの百燭光しょっこうに照らされたインキの文字がまだ青々していた。その原稿の上に、内ポケットから取出した裸のままの千円の札束を投げ出した。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
このよるいくまん燭光しょっこう消費しょうひする都会とかいあかるいよる光景こうけいなどは、この土地とち人々ひとびとのほとんどそのはなしいても理解りかいすることのできないことであったのです。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
頭には、上から落ちてくる岩をふせぐための弾力のある帽子をしっかりかぶり、手にはするどいかぎのついた小さい手斧ておのと、強い燭光しょっこう手提灯てさげとうをもち、腰には長い綱をさげていた。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
めて、そうして、まだ醒めきらぬ酔眼をとろりとさせて、室内を見廻すと、誰もいないが、さながら自身のためにしてくれたもののように、カンカンと燭光しょっこうはかがやいているし
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日本橋に一軒というまれなものであったが、それが瓦斯燈ガスとうに変り、電燈に移って今日では五十燭光しょっこうでもまだ暗いというような時代になって、ランプさえもよほどの山間僻地さんかんへきちでも全く見られない
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
そして或る夜、——元井エンジが晩めしを済ませ、燭光しょっこうの弱い電燈でんとうの下へ将棋盤をえて、例のとおり自分に話しかけながらこまを並べた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
喫茶店、レストラン、雑貨屋、水菓子屋。そして百燭光しょっこうの電燈と、蓄音器と、白粉おしろいの濃い少女達。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何ともいえないおびえた表情をしながら、全身をヒッソリと硬ばらせたようであったが、やがて大急ぎで足下の反射ストーブを消して、頭の上にゆらめく百燭光しょっこうのスイッチを注意深くひねると
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのとき室内に一つ十燭光しょっこうの電灯がついた。これは会長がつけたのだ。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その十坪ほどの、細長い、箱のような小屋には、燭光しょっこうの弱い裸の電球が、天床てんじょうから一つぶらさがっているだけである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
薄暗い五燭光しょっこうであったが、暗になれた目には、まぶしい程、パッと、部屋の中が明るくなった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
四ツほど吊されております二百燭光しょっこうの電球のスイッチが、最前からこの部屋の中に息を殺していたらしい人間の手で、次から次にひねられたからで御座います……が、よく眼を止めて見ますと……。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その十坪ほどの、細長い、箱のような小屋には、燭光しょっこうの弱い裸の電球が、天床てんじょうから一つぶらさがっているだけである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)