燈明あかり)” の例文
新字:灯明
何でも私に目認みとめられまいと思う様に本統ほんとうに憎いじゃ有ませんか廊下の燈明あかりが充分で無いのを幸いちょい/\と早足に通過とおりすぎました
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
こすっては消し擦っては消し、ようようけたる提灯の燈明あかりてらせば、煉瓦れんがの塀と土蔵の壁との間なる細き小路に、やつれたる婦人俯伏うつぶしになりて脾腹ひばらおさ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それがこゝらへんの言葉でないらしいので、賢い姫ははて、変だと感づいて、いよ/\そつと進んで行きますと、燈明あかりは塔の北側の部屋からもれてくることが分りました。
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
昔から阪東男ばんどうおとこの元気任せに微塵みじんになる程御神輿の衝撞ぶつけあい、太鼓の撥のたゝき合、十二時を合図あいず燈明あかりと云う燈明を消して、真闇まっくらの中に人死が出来たり処女むすめおんなになったり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼の心が今、暗澹あんたんと責められているように、壇にも燈明あかりともっていない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨戸あまどを引いて外の格子かうしをがらがらツと明けまして燈明あかり差出さしだして見ると、見る影もない汚穢きたな乞食こじき老爺おやぢが、ひざしたからダラ/″\血の出る所をおさへてると、わづ五歳いつゝ六歳むツつぐらゐの乞食こじき
家のなかでは仏壇に燈明あかりついかねの音がし始めた。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
千夜萬夜せんやまんや燈明あかりまち
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
霰……横の古襖の破目やぶれめで真暗な天井から、ぽっと燈明あかりが映ります。寒さにすくんで鼠も鳴かない、人ッ子の居ない二階の、階子段はしごだんの上へ、すっとその二人のおんなが立ちました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ありゃ何だ。やっぱり人間が住んでたのか。ヘンよしてもくりゃ、はばかりながら、犬の小屋としか思われねえ。さてまた意地悪く一軒も燈明あかりけぬぞ、夜だか昼だか一向無茶だ。」と四廻あたり
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)