炭取すみとり)” の例文
あなやと思う間もなく、二人の女の坐れる炉の脇を通り行くとて、裾にて炭取すみとりにさわりしに、丸き炭取なればくるくるとまわりたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
炭取すみとりをさしいだしてれは中皿ちうざらもゝつた姿すがた、これはわたし蕩樂だうらくさとおくさますみつぎにかゝられぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いゝえ、いの」と正直しやうぢきこたへたが、おもしたやうに、「つて頂戴ちやうだいるかもれないわ」とひながらがる拍子ひやうしに、よこにあつた炭取すみとり退けて、袋戸棚ふくろとだなけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
入口の火鉢ひばち炭取すみとりをかたよせてある処を通って、小供の枕頭まくらもとの方に来ようとしたが、その拍子に衣服きものすそが炭取にかかると、炭取りはぐるりと左から右に動いてその位置が変った。
炭取り (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さゝ此方へお出でなすって火鉢の側へ、婆さん炭取すみとりを持って来て、其方そっちにも火鉢を出しな大勢だから一つの火鉢にかたまる訳にいかねえ、それからお茶を入れて菓子を出しねえ、何い
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
よくれでさむいのう、お節介せつかいなれどわたしがおこしてりませう、炭取すみとり此處こゝへとおつしやるに、書生しよせいはおそれりて、何時いつ無精ぶせういたしまする、申譯まうしわけことでと有難ありがたいを迷惑めいわくらしう
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)