漕出こぎだ)” の例文
聞けば、向う岸の、むら萩にいおりの見える、船主ふなぬしの料理屋にはもう交渉済で、二人は慰みに、これから漕出こぎだそうとする処だった。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筏乗は悪く致すと岩角に衝当つきあたり、水中へおちるような事が毎度ありますが、山田川から前橋まで漕出こぎだす賃金はようやく金二円五十銭ぐらいのもので、長いかじを持ち筏の上に乗って
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
止めて歩行あるきゆきけれども更に似た人もなく早日も西山せいざんかたむきしかばいざ旅宿りよしゆくかへらんとて三圍の下より渡し船にのり川中迄かはなかまで漕出こぎだしたる時向うより數人乘合のりあひし渡し船來り行違ゆきちがひさま其の船の中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
聞けば、向う岸の、むらはぎいおりの見える、船主ふなぬしの料理屋には交渉済こうしょうずみで、二人はなぐさみに、此から漕出こぎださうとするところだつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
河中へ漕出こぎだして深水ふかんどへ沈めにかけるより仕様は有るめえが、何か重い物を身体からだに巻附けたいと思うが、あの団子を売る葮簀張よしずッぱりとこ力持ちからもちをする石が有るから、縄も一緒に探して持って
嘉吉が、そこで、はい、を握って、ぎっちらこ。幽霊船のに取られたような顔つきで、漕出こぎだしたげでござりますが、酒のにおいに我慢が出来ず……
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
魔物まものくて、魔物まものくて、おのれ五位鷺ごゐさぎ漕出こぎだして、ほりなか自然しぜんける……不思議ふしぎふね持主もちぬしるものか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とんさををつく、ゆらりと漕出こぎだす。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)