しみ)” の例文
窓の外には、見送の切符を握った正太が立って、何もかも惨酷むごいほど身にしみるという様子をしていた。車掌は飛んで来て相図の笛を鳴らした。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かれもちふるしたかばんよ。手摺てずれもやが一めんに、しみかた樺太からふとうかぶ。汽車きしや白河しらかはいたのであつた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其れから日本で喉を焼けば含嗽うがひをするのだが、この医者はぐつと嚥下のみおろして仕舞しまへ、うすると薬が喉の奥へ善くしみ込むからと云ふ。随分悪辣あくらつな治療法である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
人ならば匍匐はって這入れる様に成って居るから或いは誰か這入ったかも知れぬ、併し下から見た所では天井に血のしみはない、多分は画板の間からでも、ほとばしったので有ろう
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そうしないと中の物がふくだして蓋がもちません。深い鍋へ酒に味淋に醤油に煮汁だし美味おいしい汁を沢山こしらえて今の南瓜を柔くなるまで煮て出します。こうしたのは双方の味がよくしみて大層美味くなります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)