河畔かはん)” の例文
しかしてわれ今再びこの河畔かはんに立ってその泉流のむせぶをき、その危厳のそびゆるを仰ぎ、その蒼天そうてんの地にれて静かなるをるなり。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
焚木たきぎとしてこれほどのものはなかろう。烈々れつれつとして燃えかすひとつ残らないという。河畔かはんの貧しい生活者にもこうした天与の恩恵はある。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
新しい感激かんげきの涙が、四人のほおを伝わった。太陽が森のはしにあがった、光のが少年連盟を祝福するかのように、河畔かはんの少年を照らした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
僧侶なりあるいはラサの市民なりが石を買うて、一つあるいは二つ位ずつ背負うて東南のキーチュ河畔かはんに持って行くです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
こんな有様で、彼はヴァシーリエフスキイ島を通り過ぎ、小ネヴァの河畔かはんへ出ると、橋を渡って群島オストロヴァへ歩みを向けた。
細川氏にて茶を饗せられて径路を通行し、「トメルベシベイ」にて十伏川とつふせかわを渡る。河畔かはんに鉄道測量の天幕あり。一名の炊夫すいふありて、我牧塲を能く知る。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
その翌年の一月には、時雄は地理の用事で、上武の境なる利根とね河畔かはんに出張していた。彼は昨年の年末からこの地に来ているので、家のこと——芳子のことがことに心配になる。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
二、三間きに箱の主がいて、牀几しょうぎに腰をかけたり、ぼんやり、セーヌ河畔かはんの釣客を眺めたり、煙草の煙を輪に吐いたり、葡萄酒の喇叭ラッパ飲みをしたり、居睡いねむりをしたりしている。
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
利根川とねがわ河畔かはんにある布佐ふさという町の、かなり大きな料理屋であったが、一年ちょっとで良人おっとに死なれ、生れてまのない女の子があるため、百日ほど辛抱したあと、しゅうとめとうまくゆかないので
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
シーザーがその留守中にローマにらんの起これるを聞き、出征先より大軍をひきいて帰国し、自国に入ろうか入るまいかとルビコン河畔かはんに立ったときは、凡人の考え得られぬ苦心があったであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
場所は善光寺より四里、川中島から東南へのぼった千曲川ちくまがわ河畔かはん
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある日、ドノバンはつりざおをもって、コッソリ洞をぬけでて、ニュージーランド河畔かはんの樹陰にこしをおろして糸をたれた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
チスター河畔かはんのラブチェ種族 そこには立派な欧州風の鉄橋がかかってある。長さ一町足らずで非常に立派な釣橋つりばしであって、下は余程早川ですから棒杭を立てる訳に行かんようです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ケートはニュージーランド河畔かはんにしげっているはんのきの葉をつんで、それをついてこう薬をつくり、二人のきずに塗りつけた。これは痛みをとるに特効とっこうがあった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)