てまえ)” の例文
安「てまえ馬を引いてるのが幸いだ、己は木卸きおろしあがる五助街道の間道に、藤ヶ谷ふじがやという処の明神山みょうじんやまに当時隠れているんだ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
奥方様のほか誰方どなたもおいでがないと、目を丸くして申しますので、何を寝惚ねぼけおるぞ、てまえが薄眠い顔をしておるで、お遊びなされたであろ、なぞと叱言こごとを申しましたが、女いいまするには、なかなか
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
安「てまえ馬を引いておれの隠家かくれがまで来い、あの明神山の五本杉の中に一本大きなくすのきがある、其の裏の小山がある処に、少しばかり同類を集めているんだ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もう、わたくしは、自分だけでは、決心をいたしまして、世間には、随分一人前の腕を持っていながら、財産を当に婿養子になりましたり、てまえが勝手に嫁にすると申して、人の娘の体格検査を望みましたり
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
作「これこれ長助、手暴くせんがい、腹立紛れにてまえが毀すといかんから、矢張やっぱり千代お前検めるがい」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
乙「黙れ、不礼至極なことを云うな、御馳走なんて、てまえ酒肴しゅこうを振舞って貰いたいから立腹致したと心得てるか、振舞って貰いたい下心でおこってる次第じゃアなえぞ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
繼「私を見忘れはすまい、藤屋七兵衞の娘お繼だ、てまえは永禪和尚で、今は櫻川又市と云おうがな」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
庄吉にもてまえにも隠し、てまいたちの居ぬ折に埋めようと思って少しの間しのぎに縁の下へ入れると、絶えず人が来るし、てまいや庄吉が絶えず側にるから、見られては成らぬと思って
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
侍「なにをいう、しからん奴だ、てまえは此の者の詫に這入ったのか、何に這入ったのだ、此の者どもは悪口あっこうを申して無礼を働いた故、捨置かれんから手打にするんだ、汝は何だ」
花「誠にも糞もいらん、これてまえの様な奴が出ると村の者が難儀するから此ののちないか」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大分だいぶうぬも年を取ったが此の不届者め、てまえが今まできているのは神仏しんぶつがないかと思って居た、この悪人め、てまえは宜くも己の娘のおやまを、先年信州白島村に於て殺害せつがいして逐電致したな
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
徳「なんだア、てまえなんどは生利なまぎきに西洋物を売買うりかいいたすからてえんで、鼻の下にひげなんぞをはやして、大層高慢な顔をして居ても、碌になんにも外国人と応接が出来るという訳じゃアあるめえ」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
アノ此んな大切だいじなお金をつかうようなものは愚をきわめたんだって、それだからとても此の身代は譲れないから、てまえの親父は寄せ附けないって、アノ坊が大きくなると此の身代は悉皆みんな坊にやるから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
岩「まア呆れた事をいう奴じゃ、女とあなどり身分もわきまえないで、仮令たとい御新造様はお弱くても私が付いて居るからは……てまえたちに指でもさゝせる気遣い無い、兎やこうすると許さんから左様心得ろ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
長「何う云う事なんてとぼけるな、千代てまえは皿を割ったの」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
文「己は賊ではない、てまえは奉公人か、当家の家来か」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)