気転きてん)” の例文
旧字:氣轉
あたかも一の学説を主張するが如くにその論理を運ばするのみであって、実際問題に携わるに当って必要なる気転きてん分別ふんべつはその影すら無い。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
とお祖父さんは、早速気転きてんかして、芳夫さんに豆を浴せかけた。これで嫁の里の長男を鬼扱いにしたというそしりは受けない。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
気転きてんよくたった小姓こしょう藤巻石弥ふじまきいしや、ふと廊下ろうかへでるとこは何者? 評定ひょうじょう袖部屋そでべやへじッとしゃがみこんでいる黒衣こくいの人間。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刑事は、この不意撃ふいうちにちょっとたじろいた。令嬢の死骸に目もくれず、追跡を続ける気転きてんが利かなんだ。彼は思わず投げ出された死骸の前に立止った。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
若者達の一団に気転きてんのきいた一人がいたらここで一言わびるだけで無事無難に終ったのだが、鈍重な気候や自然はそういう気転と仇敵きゅうてきの間柄ではぜひもない。
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
自分ばかりが博識ものしりがるものなり、菊塢きくう奥州おうしうよりボツト出て、堺町さかひてう芝居茶屋しばゐぢやや和泉屋いづみやかんらうかた飯焚めしたきとなり、気転きてんくより店の若衆わかいしゆとなり、客先きやくさき番附ばんづけくばりにも
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
咄嗟とっさ気転きてんで、城中の森、うしろの山、いたる所に、ありったけの旌旗せいきを立てて、気勢を示した。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気転きてんをはたらかせていたら、駻馬かんばの一ムチ、天皇はその日にとらわれていたことだろう。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気転きてんよく、万吉の蹴ちらした枯杉の火の粉が、草から草へ吹かれてしまうと、星明りもなき真の宵闇……。わずか四、五尺の隔てながら双方の姿は、その輪郭りんかくすらもよく分らない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかでも、気転きてんのきいたものがあって、闇使やみづかいの龕燈がんどうをあつめ、十四、五人が一ところによって、明かりを空へむけてみた結果、はじめて、そこに、おどろくべき敵のあることを知った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お、新参しんざん民蔵たみぞうであるな、いつもながら気転きてんのきいたやつ……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)