歿なくな)” の例文
わたくし祖父じじ年齢としでございますか——たしか祖父じじは七十あまりで歿なくなりました。白哲いろじろ細面ほそおもての、小柄こがら老人ろうじんで、は一ぽんなしにけてました。
石川啄木が歿なくなつてからいまだ二十年かそこらにしかならないのに、石川の伝記が往々誤り伝へられてゐるのは石川のためにも喜ばしいことではない
石川啄木と小奴 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
此の時助七は五十三歳で、女房は先年歿なくなって、跡に二十一歳になるせがれ助藏すけぞうと、十八歳のおしまという娘があります。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
算哲様はお歿なくなりになる二週間ほど前に、遺言状を作成して、それを館の大金庫の中に保管させました。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
うちの子供が歿なくなりました時には、ここのおかみさんが来て、いろいろお世話をして下すったのに、そのおかみさんが幾日も経たないうちにこんなことになってしまって……。
歿なくなられた良人つれあひから懇々くれぐれも頼まれた秘蔵の秘蔵の一人子ひとりつこ、それを瞞しておのれが懲役に遣つたのだ。此方このほうを女とあなどつてさやうな不埒ふらちを致したか。長刀なぎなたの一手も心得てゐるぞよ。恐入つたか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
矢張やはりそうであったか。——わたくしはそなたがまだ息災そくさい現世げんせくらしてるものとばかりおもっていました。一たいいつ歿なくなったのじゃ……。』
玄「成程因縁はあるまいが、龜甲屋の御夫婦が歿なくなったあかつきは、昔馴染の此方こなたすがるより外に仕方がないによって」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
両親の歿なくなつたのも、わたくしであれ、貴方であれ、かうして泣いて悲む者は、ここに居る二人きりで、世間に誰一人……さぞみんなが喜んでゐるだらうと思ふと、唯親をなくなしたのが情無なさけないばかりではないのですよ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
(鼻を詰まらせる。)たうとう御牢内で歿なくなりましたよ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
やがてわたくし祖父じじ……わたくしより十ねんほどまえ歿なくなりました祖父じじれてて、わたくし説諭せつゆおおせつけられました。
由「くり/\ふとったいお坊さんでございましたが、御新造のお乳が出ませんので、八王子のおうちへ頼んで里におやんなさいましたが、間も無く歿なくなったそうでございます」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それについていろ/\お話があるのでございます、丁度わたくしが当家へまいって二日目でございますが、亥太郎さんのおとっさんが歿なくなりました、其の時に亥太郎さんが葬式金とむらいきんにお困りなすって
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)