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此命
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このいのち
此命御前様に捨て候ものに
無御座候はば、外には此人の為に捨て
可申と
存候。
嫁になどゝは
思ひも
寄らぬことなり
芳之助は
兎もあれ
我れ
許さずと
御立腹の
數々それいさゝかも
御無理ならねどお
前さまと
縁きれて
此世何の
樂しからずつらき
錦野がこともあり
所詮は
此命一つぞと
覺悟の
道も
同じやうに
行逢つてお
前さまのお
心伺へば
其通りとか
今更御違背のある
筈なし
私は
嬉しう
存じますを
昼の
中は
頭重く、胸閉ぢ、
気疲劇く、何を致候も
大儀にて、
別けて人に会ひ候が
憥く、
誰にも
一切口を
利き
不申、
唯独り
引籠り居り候て、
空く時の
経ち
候中に、
此命の絶えず
些づつ弱り候て