ぞめ)” の例文
帯の掛けを抜いて引き出したので、薄い金紗きんしゃあわせねじれながら肩先から滑り落ちて、だんだらぞめ長襦袢ながじゅばんの胸もはだけたなまめかしさ。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
紅白だんだらぞめの肉襦袢や、肉色の肉襦袢や、あるいは半裸体の男女が、たがいに手を組みひざを合せて、ゲラゲラ笑いながら見物していた。誰もこの残酷な遊戯をめようとはしなかった。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
岸へぎ寄せて、枳殼垣からたちがきへ引つ掛けたのを見ると、まぎれもなくそれは、緋縮緬ひぢりめん扱帶しごきで、斑々としてしぼぞめのやうに薄黒くなつてゐるのは、泥に交つた古い血の凝固かたまりだつたのです。
うしろを見ると、大漁ぞめ半纏はんてんを引ッかぶった漁師だの、熊のような男達が、腕ぐみをして、こんどは前にこりて用心ぶかく、こっちの足どりにつれて黙々と、船虫のようにくッついてくる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えびぞめのきぬは、やれさけ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あの人、ろうけつぞめの物を
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
御岳ののぼり口には、いくつもの小屋やうまや湯呑所ゆのみじょなどがっていた。いま山は紅葉もみじのまっさかりで、山腹さんぷく山上さんじょう、ところどころに鯨幕くじらまくやむらさきだんだらぞめ陣幕じんまくが、樹間じゅかんにひらめいて見える。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えびぞめのきぬは、やれさけ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)