朝明あさけ)” の例文
おおらかに張り渡した傾斜のうえにはおたまじゃくしに似た薄雲うすぐもがちらちらと散らばって、如何にも朝明あさけの風を思わしめる。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
朝明あさけすがた」という語は、朝別れる時の夫の事をいうのだが、簡潔に斯ういったのは古語の好い点である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
この朝明あさけしぐるる見れば、霧ふかく時雨るる見れば、うち霧らひ、霧立つ空にいや黒くそのうかび、いや重く下べしづもり、いや古く並び鎮もる、なべてこれ墨の絵の杉、見るからに寒しいつかし
このねぬる朝明あさけの風にかをるなり軒端の梅の春のはつはな
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
朝明あさけより夕をかけて熟睡うまいする
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
朝明あさけの名殘みだれたる
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
硝子戸をさやに拭きこむこの朝明あさけ隣の雪が眼の傍に見ゆ (二二八頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なおこの歌の次に、「君に恋ひねぬ朝明あさけが乗れる馬の足音あのとぞ吾に聞かする」(巻十一・二六五四)、「味酒うまさけ三諸みもろの山に立つ月のし君が馬のおとぞする」(同・二五一二)の例がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その廣葉夏の朝明あさけによきものと三畝みうねがほどは芋も植ゑたり
朝明あさけより夕をかけて熟睡うまいする
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
この朝明あさけしぐるる見れば、霧ふかく時雨るる見れば、うち霧らひ、霧立つ空に、いや黒くそのうかび、いや重く下べしづもり、いや古く並び鎮もる、なべてこれ墨の絵の杉、見るからに寒しいつかし
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一つ啼く茅蜩ときくに音につぎてこもごもに啼く朝明あさけの茅蜩
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蘇鉄の葉八方に開くこの朝明あさけ雪しみじみとりにけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
冬青もちの木も雪をゆすれり椎の木も雪をゆすれり寂しき朝明あさけ
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
硝子戸を強く拭きこむこの朝明あさけ隣の屋根の雪がそばに見ゆ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
野分のわきだちかけりつぎ來る秋鳥のきそふ鋭聲とごゑ朝明あさけまされり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
野分のわきだちかけりつぎ来る秋鳥のきそふ鋭声とごゑ朝明あさけまされり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
朝明あさけ待たず終夜ひとようづくみ死鳥しにどりの雄鴨がそばに雌鴨斃れぬ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
朝明あさけ待たず終夜ひとようづくみ死鳥しにどりの雄鴨がそばに雌鴨斃れぬ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
七面鳥朝明あさけの霜に居竦むは目のふち碧し葦づかのまへ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
霧雨きりさめ朝明あさけ辛夷こぶし
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
朝明あさけきりゆるぎつゝ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)